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「売る」営為 [よしなしごと]

ぼくは営業と云うかマーケ屋と云うかウェブ屋と云うか、と云う辺りが商売で、それでfuku33さんのものづくりがわかる文系の人材を!「日本のものづくりは世界一」と云う書評を読んでちょっと思うところがあったりした。

ものを売るにあたって、実際のところその「もの」がどんなふうに役に立つ、いいものなのかを理解しておく必要がある。そのためには、その「もの」が生み出された背景というかその「もの」に注がれた技術、こめられた思いのようなものを分かっておかなければいけない。
——と云うことが当たり前のように見えて、実際には販売の現場にはそんなことは少しも要求されてはいないのが現実。

売ればいいのだ。南極のクマに氷を、レバノンのラクダに砂を。

経営学のケースでも、たいていはいきなり「競争力のあるホンダのバイクがアメリカで売れた」とか、「IBMの優れた開発力が」とか、いきなり「それはそういうことにまずしておいて」、そしてすぐ「技術のその先」の話しになっているわけですが、サボりすぎじゃないかなあ。どれだけリーダーシップが発揮されようが、従業員がコーチングで働き甲斐を見出そうが、まずものがよくなければ、それを説明できなければ、ただでさえ後知恵がますます後知恵になる。

後知恵も何も、「ものの競争力なんか関係ないから売る」と云うことが命題になっているのが現場で。

もちろんこれは、もともとは「我が社の製品は世界一ィィィィ!」的な信頼感が前提となっていたから出来たことだったんだろうと思うんだけど、実際のところもはやその辺は完全にメタ化しちゃって、「つくる技術」と「売る技術」はまったく連動しない別のものになっちゃってる。
何かが売れるには「つくる人間」も「売る人間」も大事なはずなんだけど、このふたつが同期しない。クズでも売れなきゃ「売る人間」が悪い、ってことにもなるし、そうなると売る側からすると「つくられたもの」なんかどうでもよくなって、「売る技術」だけに特化することになる。

どう考えても不健全なフィードバックシステムなんだけど、これって直感的には多分なんかまずい事態が起きてるんだろうなぁ。


タグ:社会科学
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コメント 4

柘植

こんにちは、pooh さん。

以前、アサヒビールの経営改革に関して書いた本を読んでいて、無理して売ることの悪循環みたいな事が書いてあって「なるほど」と思ったのね。

アサヒビールが首都圏でのシェアを10%を割り込むところまで落としていた頃には、営業マンはひたすら酒屋さんにお願いして「押し込んだ」らしいのね。その結果として、酒屋には古いビールが在庫されたわけです。酒屋は当然、古い在庫から掃かせていこうとするので、消費者が買うのは常に古いビールとなる訳です。ビールというのは、時間が経つほどに「不味くなる」ものだそうでして、当然ですが「たまにはアサヒにしてみるか」と気まぐれを起こした客がいても、「やっぱりアサヒよりキリンとかの方が旨いや」となり、ますます売り上げを落としていった、なんて話です。

樋口康太郎だったか、経営者がその事に気が付いて、全く逆のことをさせるわけですね。営業マンに酒屋を回らせて、製造日の古いビールを買い取ってこさせて、消費者の手に渡るビールを常に「新しく」させるなんてことをやったわけですね。まあ、それができるだけの原資を手配出来た部分が彼の腕で有ったわけだけどね。

プロダクトアウトからマーケットインへの流れなんていうけど、それを製造から販売まで一貫して考えるには、今の世の中は販売が複雑に成りすぎているのかもしれませんね。
by 柘植 (2007-02-19 10:35) 

pooh

> 柘植さん

> プロダクトアウトからマーケットインへの流れなんていうけど、それを製造から販売まで一貫して考えるには、今の世の中は販売が複雑に成りすぎているのかもしれませんね。

と云うか、「販売が複雑にならないと喰っていけない」と云う輩がたくさんいて、彼らのインセンティブも絡んでいるのかも。
――って、なんか天に唾するようなことを書いている気もしますが。

「売ること」を「売ること」として単体でその技術を見るのは、例えば成果主義の名のもとに手軽な経費削減を図るような場合のバックボーンとしてとても便利な発想なんですけどね。近視眼になりすぎて自分を自分で袋小路に追い込むようなことも結構発生していそうです。
by pooh (2007-02-19 12:58) 

柘植

こんにちは、poohさん。

私が「気に入っている話」を一つ紹介してみますね。堺屋太一が言っている「利益質」という考え方です。これまでの会社経営などでは「利益」は額で表され評価された訳です。そしてその評価は3比主義、つまり前年比・他社比・予算比によりなされた訳ですね。それに対して「質係数」を考えてかけ算するというわけです。

利益質の質係数としては「外延性」「継続性」「公益性」などを上げている訳です。外延性とは、その利益が今後どれだけ伸びる要素を持っているかということで、新たなマーケットの開拓による利益は額が初年度小さくても大きな係数となるので評価は高くなります。継続性とはその利益が一過性かどうかを判断する指標でして、例えば「ハワイ旅行付き懸賞」などの景品で一時的に伸びた利益はこの係数が小さくなるため額が大きくても評価は低くなります。公益性は「あるある」の捏造で伸びた売り上げの様なものでして、バレるリスクを考えるとトンデモ無くマイナスの係数になりそうですね(笑)。
by 柘植 (2007-02-20 11:13) 

pooh

> 柘植さん

それ、とても大事な話のような気がします。
なんと云うか、本来なにかしら他人に影響力を持つ種類の人間は、それに呼応した洞察力なり先読みの力なり品格(笑)なりが要求されてしかるべきで、それが欠けている(例えば目先の「分かりやすい」指標として短期的利益しか見られないとか)人間はその立場にいるべきではなくて。

実際のところ、サスティナビリティに充分に配慮できないようなスタンスの経営は、もはや立ち行かなくなるところまで本当は来ているんだと思います。よってたかってそうなれば、今度は国が立ち行かなくなる、みたいな。
by pooh (2007-02-20 22:14) 

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