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届かない想像力 [よしなしごと]

片瀬久美子さんのtweetを集めたtogetter、片瀬さんのお願いを読んで、こちらのエントリのコメント欄でのやりとりをちょっと思い出した。

元エントリの主旨は「表現の場所に立つこと」についてだったんだけど、それとは別の部分として。
ぼくにはこどもがいなくて、だからこのエントリの議論のなかで「その表現によってじっさいに傷つけられうるひと」については充分な想像力が及んでいるとは云い難い状態で論じていて。当然ながらどうやったって議論としては包括的なものにはなりえない状態なんだけれど、ぼくはぼくの持ちうる視点からしかどうせ論じられないので、欠落は意識しながらもそのまま議論を進めていた。

で、コメント欄にダウン症の娘さんをお持ちのsatomiesさんがお越しになった。
そして、satomiesさんの残してくれたことばは、その欠落を少なからず埋めてくれただけではなくて、「責任も因果もないのに起きてしまったこと」に対する、すこやかな向き合い方のひとつを示してくれた。そして少なくともぼくは、そのsatomiesさんのスタンスに、おおげさでなく救われた。ひとはこうもあれるのだ、ありうるのだ、と云うことに。
satomiesさんが例外的なのかどうか、ぼくにはわからない。わかったのは、ひとがそうありうる、と云うこと。そして、satomiesさんのことばに触れるまではそのことに確信を持てないくらいに、ぼくの想像力がとぼしかったこと。じっさい自分ではその程度のものだ、とわかっていても、これはやっぱりある種恥ずべきことには違いない、と思う。

そう云うわけで、ぼくが云えた筋ではまぁ、まるきりないのだけれど。
福島の放射能による催奇性を語ろうとするひと、そう云う情報を【拡散】しようとするひとたちには、その内容を当事者として受け止めるひとたちの目にその情報が触れることに対して、どれくらいの想像力が働いていますか? と云うのは、すこしだけ問いたいように感じる。
野尻美保子さんの発言を中心としたtogetter、放射性物質による先天性の異常のデータを読む。にもリンクしておきます。
タグ:片瀬久美子
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コメント 9

satomies

呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン、
って、別に呼んでないですか、そうですか。おひさです。

さて。押し付け的書籍紹介です。
「魔法の手の子どもたち-先天異常を生きる」
http://www.tarojiro.co.jp/cgi-bin/SearchMain.cgi?operation=3&ISBN=4-8118-0552-6

支援者としてチョー有名人である「先天性四肢障害児父母の会」設立者の野辺明子氏の著書。自身が「手に先天奇形をもった赤ちゃん」を産んだ衝撃やら、赤ちゃんの手を隠して外出していた頃の話やらが出てくるんですが。
今回これを紹介しようと思ったのは、成長した野辺氏のお嬢さんの思いが出ている章がとても関係しているなあと思ったこと。
「おばけがに」とからかわれたり、中学の美術の「手のデッサン」に苦しんだり、いろいろな葛藤をもちながらも、自分の手にプライドを持って生きてきた野辺氏のお嬢さん。高校生の時に「ゴルフ場建設反対運動」で考えこむんです。その理由に「水質汚染による奇形児の出産率が高くなる危険」というのがあげられていることで。

以下、お嬢さんの文章を引用で。
「私も水はきれいなほうがいいと思っていますし、生活を立てていく方法としてのゴルフ場は賛成できない部分がいっぱいあるんです。でもその理由として奇形児が生まれてしまうことを挙げられると、『反対、反対』とは言えなくなってしまう。じゃあ、自分の存在ってなんだろうとか、いろいろ考えてしまいました」。

この章は「障害をもたずに生まれて育った自分」の立場として、けっこう考えさせられる内容でした。
先天異常というものは、ある一定の割合で出現してくる可能性があるというもので。そうした人たちに今後、通常経験しなけらばならなくなる差別の上に、さらなる『目』が浴びせられる可能性があるのだと思うと、イヤだなあと思いますね。

ちなみにこの書籍は絶版になってますが、図書館にある率も高いし、アマゾンには中古があるようです。
障害とか先天異常とかを超えて、ある種の哲学書のような一冊だと思います。オススメです。
by satomies (2011-12-09 12:41) 

pooh

> satomiesさん

あやや、お呼び立てしてないっすよ。ごぶさたです。

> 「障害をもたずに生まれて育った自分」の立場

正直、自分以外の立場をちゃんと想像すること、と云うのは難しいんです。ぼくにもぜんぜんひとのことをその面でなじれたりするわけではありません。ただ、だからそれを当然のこととしていい、と云うことにはならない。

> 通常経験しなけらばならなくなる差別の上に、さらなる『目』が浴びせられる可能性

さらにいまは「あらかじめ浴びせられている現実」が一部で生じてるんです。想像力の至らなさはしかたないにしても、それを根拠に正当化してもいい、と云う話にはならないはずなんですよね。

> オススメです。

ぼくの脆弱な精神が耐えられるかどうか(^^;。
by pooh (2011-12-09 12:59) 

YJS

poohさん、こんにちは(おひさしぶりです)。YJSです。

> > オススメです
> ぼくの脆弱な…

ここでの議論のスジから外れるかもしれませんが。
===
立岩真也さんの『弱くある自由へ』
http://www.amazon.co.jp/dp/4791758528/
===
もし未読であれば一読をお勧めします。書店だと置いてないことが多いと思いますから、図書館などの方が良いかも。

障害については、それをもつ当人だけでなく、家族や社会などの「周りがどうか」という点も必然的に関係してきますから、上述の書籍におけるその辺り記載が参考になるのではないか、と。

by YJS (2011-12-09 16:36) 

pooh

> YJSさん

ありがとうございます。

こう、ちょっと踏み込んだ云い方になってしまいますが。
放射能を「呪い」のように捉え、放射能に過剰に怯えない人間を「禁忌を無視する愚者」のように扱って、結果的に「因果による報い」を示唆するような言動をおこなうひとが、ちょっと目立つようになっています。
その考え方の理路も大きな問題だと思うんですが(論じてきていませんが、結局はニセ科学の問題と同様に呪術的な思考によるものだと思っています)、そもそも障害をそのようなものと捉えること自体がどうなんだ、と云う話でした。
by pooh (2011-12-09 22:08) 

pooh

仙台市には各区ごとに図書館があって。当然ながら置いてある本は違うので、借りたい本が手近な図書館にない場合もあるわけで。
そう云うわけでsatomiesさんに教えていただいた本はまだ未読なんだけど(メディアテークには置かれてなかったので)、YJSさんに教えていただいた本は読めた。レビューが書けるほど読みこなせたわけじゃないけど、得られた示唆はどこかで活かしたい。
by pooh (2011-12-19 21:05) 

YJS

poohさん、こんにちは。YJSです。

> YJSさんに教えていただいた本は
> 読めた…

おぉ!
薦めておいて言うのもなんですが。読むの、しんどくなかったですか?
しんどくなかったら良いのですが…。

私には、読む前と読んだ後とで「たぶん人生が(少し)変わっただろう」と思う本がいくつかあるのですが、立岩さんの『私的所有論』と『弱くある自由へ』の二冊は、まちがいなくそれに入ります。
私にとっては、それ程の本でした。

by YJS (2011-12-20 15:50) 

pooh

> YJSさん

> 読むの、しんどくなかったですか?

と云うか、ちゃんと読めてるのか自信がありません(^^;。図書館に返さなきゃいけなかったし。
でもまぁ、残ったものはあります。

ご紹介ありがとうございました。
by pooh (2011-12-20 16:14) 

pooh

ぼくがなぜ、最近あまり書けないのか。そしてこのタイミングで、なんでこんなエントリを書いたのか。
べつだんそんなことを、だれかがわかってくれるはず、みたいなことは思ったことはないけれど。わからなくてあたりまえ。

http://twitter.com/#!/A_laragi/status/167554157773991936

自分の言説が、そう云う言動を免責してファシリテートするために使われて来たことについてはどう思ってるのかな。

まるで不測の事態、みたいに云っているけれど、ほんとうにそうなのだとすればそれはすでに免責され得ない想像力の決定的な欠如の結果だし、他者を糾弾することによってこれからの自分の立脚点を得ておこう、と云う意図のものに発されたことばなのなら、なおさら卑劣だよねぇ。
by pooh (2012-02-12 10:09) 

pooh

なんでもいいけどさぁ。
https://twitter.com/mariscontact/status/240054023883984896

逆に訊くけど、沖縄の若い子たちが週末に北谷に行くのって、なにから逃げてるの?
by pooh (2012-08-28 11:39) 

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