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専門性 [よしなしごと]

薬剤師兼セラピスト、でいらっしゃるらしいあやさんの、代替療法と云うエントリを読んだ。

そこで代替療法を行う場合は、素人が行うのではなく、プラクティショナー(専門家)に必ず見てもらう必要があると思います。
勝手に使うと大変なことになる場合があります。
プラクティショナー(専門家)は、その分野に関してしっかりした知識があるはずです。ある程度の医学的知識もあると思います。
そのためにプラクティショナー(専門家)がいるのですから。
おっしゃることはわかる。

ぼくたちの生活は、そこに専門家の介在がないと成立しない。と云うか、各自がおのおの専門家であり、その専門性に応じて役割を分担することで総体としてコストを下げ、生活の水準を底上げする、と云うのがぼくらの暮らす社会のしくみだ。

じゃ、その専門家の専門性の裏付け、と云うのはどこから生じてくるのか。
何度か書いているので細かいことは書かないけれど、こと医療については、専門性の源泉は共有可能な、つまりは科学的な方法で計測されたその行為の妥当性、と云うことになる。科学的知見の積み重ね、と云う巨人の肩の上に、きちんと立っているか。そこから見えるべき風景と、施す医療的行為のあいだに不整合はないか。

あるときは科学的根拠の実在を主張し、あるときは現在の科学の(連続性があきらかでない)延長上にあることを主張し、あるときは現在の科学とはまったく違った原理を主張する。マスメディアの報道に対する対抗言論として各ホメオパシー団体がそれぞれに掲げている主張からは、専門性の充分な根拠となりうるような一貫性は見いだせない。

黒猫亭さんの「科学で解明されていない」と謂う嘘と云うエントリの、最初の一節。
ホメオパシーについて「科学的な根拠はよくわかっていない」とか「科学ではまだ解明されていない」と表現すると完全に嘘になると謂うことは、もっと広く周知されるべきなのかもしれない。
そう、そこにあるのはだ。嘘に根拠づけられた専門性、なんて云うものは存在しない。
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コメント 2

黒猫亭

>>そう、そこにあるのは嘘だ。嘘に根拠づけられた専門性、なんて云うものは存在しない。

ニセ科学に関する問題では一つ節のように嘘の問題を考えてきたように思いますが、ホメオパシーに関してもやっぱり、最初は嘘でなかったものが何処から嘘になったのか、と謂うことが重要な問題のように思います。

ご紹介戴いたエントリのコメント欄でも書いていますけれど、ホメオパシーが単なる「合理的な期待」に過ぎなかった段階ですでに「科学的な最新の治療法」として実践され、新興宗教のように分派して組織化したのがすべての禍根だと思うのですが、それ自体は当時の時代性を考えるとそこまで批判するようなことでもなかったわけで。

ただ、批判すべきか否かと謂う問題ではなく、現代におけるホメオパシーの有害性の端緒がそこにあったことは間違いないわけで、二〇〇年の歴史それ自体が今更過ちを認めることの障害になっているのだろうと思います。

何と謂っても、これまでホメオパスは、たとえば一般的なニセ科学の普及者や信奉者とは違って、一定程度社会に容認された存在だったわけですから、それが科学的根拠なしと謂うことで直ちに社会から排除し得るかと謂えば難しいところがあります。

これまでホメオパスを志した人々は、別段ニセ科学でボロい商売をしようと思った人ばかりではないわけで、普通に人を癒す職業の一つとしてホメオパスを有望視した人々もたくさんいるわけですね。他国における扱いやこれまでの歴史性自体がその真正さを担保すると謂う発想も、そんなに間違った考え方ではないでしょう。

ただし、ホメオパシーの理論や効果に何ら科学的妥当性がないと謂う前提で考えてみれば、習得するのに数年掛かるような体系立てられた技術や知識の集積は全部絵空事の嘘と謂うことになるわけで、何と謂うか、その虚しさや非情なまでの滑稽さを前にすると、ちょっと言葉もないと謂う部分があります。

ホメオパシーの専門性と謂うのは、徹頭徹尾「ホメオパシーと謂う虚構の物語」についての専門性でしかないわけで、その「物語」を共有する人々の間でのみ発効する呪術についての専門性でしかないわけです。

で、その呪術は歴史的に「科学的な新治療法」であることを主張してきたわけですから、今更オカルトにもなれず、現代医療と相互排除的な関係にならざるを得ず、つまりニセ科学としてしか存在の余地が残されていないわけですね。

とは言え、だからと謂って現時点におけるホメオパシーに同情すべき余地があるとまでは思いませんし、今頃になって徒労に過ぎない「お医者さんごっこ」に習得のコストを掛けさせようとする人々の存在は、その頑迷さの故に社会悪の領域に踏み出していると思います。
by 黒猫亭 (2010-08-16 06:57) 

pooh

> 黒猫亭さん

> 最初は嘘でなかったものが何処から嘘になったのか

多少事態を複雑にしているのは(ホメオパシー信奉者がよく口にするように)現代科学を後ろ盾とする通常医療が、現時点で完全に科学的でも、万能でもない、と云う事実のようにも思います。
で、このあたりで関わってくるのは、たぶん科学と云うものの特質であり、またそれを有効な手法たらしめている部分、まさに「過ちて改むるに憚ることなかれ」と云う性格にあるのではないかと思います。結果、通常医療は進歩します。より有効なメソッドを目指して。

原理的に、ホメオパシーはそのスタンスを持てない。「嘘でない」ものになる道を自ら閉ざしている。

> ホメオパシーの専門性と謂うのは、徹頭徹尾「ホメオパシーと謂う虚構の物語」についての専門性でしかない

これが文学やオカルトなら、なにかしら非難されなければいけないような属性ではないんですけどねぇ。
by pooh (2010-08-16 07:41) 

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