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文化衝突 (「ベルカ、吠えないのか?」古川 日出男) [ひと/本]

だいたい何冊か本を並行して読んでいるので、結果的に読み終わるまでが遅い。その並行して読んでいるなかでもやっぱり止まらない本と云うのはあって、そう云う本はほかの本を読み進めるペースを律速する結果になる。

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)

  • 作者: 古川 日出男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/05/09
  • メディア: 文庫
こいつのおかげで池内了氏の疑似科学入門の読了に時間がかかって、読み終わった頃にはレビューが出揃ってもうぼくごときが改めて書くべき状況じゃなくなっていた、と云うのはまぁ余談。

古川日出男のレビューはここで以前一度だけ書いたことがある。それはサウンドトラックについてのわりと酷評に近いレビューで、でそのあとぼくはアラビアの夜の種族を物語の終盤、3巻も後半になってから投げ出して、もうなんか古川日出男はいいのかな、ぼくと相性がよくない方向に向かってるのかな、みたいに感じたりもしていた。多分それは、ぼくが13 沈黙/アビシニアンを読んで感じた興奮の種類を自分で理解していなかったからだ、と云うことに気付いた。

きっちりと発展した、精緻な文明・文化。そこに生の呪術的な思考が、野生の思考が紛れ込む。その強靭さで、破壊する。世界をドライヴする。その快感。
表面上綺麗に整った世界の伏流水として流れる、飼いならされていない思考が、その力強さで整合を打ち破る。そこに立ちあらわれるもの。

この小説では、世界を別の秩序のもとに組み伏せる思考は、人間のものですらない。それは、イヌのものだ。
そして、その角度から見た文明・文化の表面性と、そのほころび。イヌたちは人間たちの文明・文化に隣接した場所でその系譜を連ねながら、彼ら彼女ら自身の持つ文脈でそこに関与し、光を当て、再構築していく。

文化衝突と、それが生じせしめる物語。たぶんそれが、古川日出男からぼくが示してもらいたがっているものだったのだろう。現代日本文明や中世イスラム文化では、ただ単にスケール不足だっただけだ、と云うように、いまは思う。
うぉん!
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TAKA

そして子孫の犬たちは、世界中に繁栄しておりましたか。
やはりノンフィクションでした。四国は眉山に突如舞い降りた皆様おなじみの、あの崖っぷち犬騒動の事であります。(以下、犬寄りの脱力ネタ。お暇な時にでも読んでください^^;)

「今そこに有る危機。」を訴えるために集まったその犬たちは、健気にも四国山脈の金輪際に、果敢に猛チャージ。その抗議の様子を聞きつけて駆けつけた崖のスペシャリスト、「徳島国際☆救助隊」とも暫し対等に渡り歩いたその軽快なフットワークは、まさに「大気圏にぶつかって跳ね返される飛び石小惑星」の有様でした。追尾され、窮地に追い込まれた挙句の跳躍は、まさに白眉の散り際でありました。
しかしながら最後は人間たちの、「急遽ここに持って来た機器♪(^-^」に体躯を絡めとられ、決死の「シェパーッドアタック!」奔走も今ここに、退去したのでありました。

その様子を、麓で見上げていた銀牙やその相方である赤カブトたちも、同士である崖っぷち犬たちの、その絶望の遠吠えにカフカな希望を見出し、久しく青雲の志を持っているはずの有志を求めて全国に、散開したのであります。

そしてバンアレン帯の雲の上にいる先駆の宇宙犬たちも、見上げた後輩の奮闘には、大いに満足したのでありました。「重畳、重畳。次は連城の長城で跳梁バックエンドしてちょ」

ちなみに、「F1レッドブルチーム」の相方である元F1選手のベルガーさんは、今でもあのお茶目な言動は、常に「フルスロットル状態」だそうです。
さらにちなみにレッドブルのモーターホームでは、来客に無料で「赤牛」を振舞っているとか。
日々のアルコールで常にバックファイヤーな肝臓には、耳寄りの情報ですな。
by TAKA (2008-05-19 15:44) 

pooh

> TAKAさん

ところがですね。この話に出てくるイヌたちは、軍用犬の血筋なんですよ(途中でほかのものが混じったり、犬橇引いたり、ショードッグになったりしてますが)。
だから、人間の歴史のとても生臭い部分と密着してその系譜が展開するんですね。
by pooh (2008-05-19 21:59) 

newKamer

『疑似科学入門』の書評も書いて欲しいなと思います。
by newKamer (2008-05-21 20:11) 

pooh

> newKamerさん

ですからぁ。
と云う訳で「レビューしないレビュー」を書きました。
by pooh (2008-05-21 23:14) 

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