背景を認識する [世間]
novtanさんの科学者だって金のためなら本当のことは言わないを読んだ。まぁ、現実だと思う。誰でも食べていかなければいけないし。でも、「食べていくこと」の根源は、やはり職業倫理から発しているのではないかと思うが如何。
信頼できる科学者が言っているから正しいという態度も決して正しいわけではありません。どういうつもりで言っているか、すなわち文脈を読み取る力がないと信じることは盲目的な信仰と同じです。
これは全く同感で、まぁそのままのことを菊池誠教授も云っているし(なんと云うか、彼がこれを口にするとちょっと微妙な二律背反が生じるのだけれど、そこまで引き受けての発言ですな)。そこを短絡すると、原理的にはニセ科学を信じるのと同じことになってしまう。
でも、「文脈を読む」ことは「空気を読む」こととは違うと思う。
科学の世界も空気を読む力が全く不必要なわけではなく、むしろ研究の意図を読み取り内容を曲解しないためには積極的に必要なのです。
「空気を読む」と云うのは事物の背景をきっちりと捉える、と云うことではなく、「事物の背景を誰にでも分かるような紋切型で規定した上で、それを共通認識の前提とすることで自分を相対的に多数派にする」と云う意味だと云う気がするので。
って云うかぶっちゃけ「空気を読む」と云う言葉がいまひとつ気に入らないだけかもしれないけど。だって、それはお約束に従えない誰かを、(それがなぜいけないのか、どこがお約束に反しているのかについての考察も指摘もなしに)一面的に切り捨て、嘲笑う時以外に使われない言葉だし。背景にある文脈を推測して真意を把握することは時には大事だけど、それを「空気を読む」と云う云い方をするのは違うと思う。
あ、でもこう云うところに引っかかるのはlsさんに「空気を読む(だけでまともに物事を自分の頭で判断しないままなんとなく物事を進める)」のが「文系的」と決めつけられたことへの反発がまだ残っているだけかもしれない。やつあたりかも。novtanさんごめんなさい。
トラバありがとうございます。文学部出身なのに言葉の使い方にセンシティブではないnovtanです。以後お見知りおきを。
確かに空気を読むと文脈を読むというのは一緒ではないですね。一応今回の話に対応する点としては前者については「俺も仕方ないのよ、仕事だから。わかって」みたいなニュアンスがあって、後者は「そこだけ抜き出してもしょうがないよね」的な話なのかな、と思っています。
一緒にしたつもりはなく並列のつもりだったんですけどわかりにくいですよね、あれだと。
by novtan (2007-02-06 08:23)
> novtanさま
はじめまして。いつもブックマークありがとうございます(このブログは弱小なだけじゃなくて、なぜかトラフィックの相当部分をはてなから受けてるんです。so-net blogなのに)。
ひょっとすると単なるぼくの誤読だったんでしょうか?
だとしたらすみません。でも、だとしたらエントリの意図がよく分からなくなってしまうかも。
by pooh (2007-02-06 22:26)
多分すりあってないのは、ここの点だと思うのですが、僕が言っている「空気を読む」はいわゆる2ちゃんねる的な「空気嫁」ではなくて、一般的にいうところの取り巻く状況を把握するという意味で、「文脈」が議論そのものに付随するものであるのとは違い、議論を取り巻く環境に付随する、読み手に汲んで欲しいもののことを指しています。
すなわち、今回の話で言うと「ヒモ付き研究なんだからそういうニュアンスを醸しだしている、ってのをわかってね」という科学者側の願いの部分を表現したかったわけです。
by novtan (2007-02-07 08:09)
> novtanさま
あぁ、なるほど。「判断において相手の状況を斟酌する」と云うようなニュアンスですね。
やっと読み取れました(理解能力がない)。
そう云う「空気読み能力」って多分必要なんでしょうけど、なんとなくそう云うものが必要とされること自体うすら寒い世の中だな、とか思ってみたり。
by pooh (2007-02-07 08:31)
いやいや、僕の書き方も分かりにくかったと思いますよ。
空気読む能力は一部の世間を隔絶したような人以外はどうしても必要になっちゃいますよね。
by novtan (2007-02-08 00:01)
> novtanさま
今回感じたのは、自分で「空気を読むこと」と「空気嫁!」と他人に向かって口にすることは、実はまったく意味が違う、と云うことですね。用語が同じなので、ぼくも混同しがちでした。
最近は頻繁に口にされる用語なので、気をつけたいと思います。
by pooh (2007-02-08 07:46)