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変わらないもの [ガムラン]

ぼくはあんまり学術的な関心からガムランを聴いているわけじゃないんだけど、やっぱり興味があって買ってしまった。

Vol,1 ブラルアン、パンクン、ブスンビウのガムラン・ゴン・クビャール

Vol,1 ブラルアン、パンクン、ブスンビウのガムラン・ゴン・クビャール

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ビーンズ・レコード/アオラ・コーポレーション
  • 発売日: 2009/10/11
  • メディア: CD

で、買って聴いてちょっと驚いた。

このCDはAmazonで国内盤と輸入盤を扱っていて、価格の安さだけを理由に輸入盤を買ってしまった(上のリンクは国内盤だけど)。ひじょうに内容豊富なブックレットがついていて、関連情報がたくさん載っているのだけど、英語なので読む気力が湧かない。ちょっと失敗だったかも。

うちにあるいちばん古いガムランの録音はノンサッチのバリのガムラン1で、これがクレジットによると1966年の録音。で、同じくノンサッチのバリのガムラン2~ガムラン・スマル・パグリンガン(これについてはエントリも書いている)には録音時期は1960年代後半、とある。
これに対して、このアルバムの録音時期は1928年。もうほぼ90年前。と云うか、ぼくの理解ではゴン・クビャールって様式が成立して流行し始めた、もうその端緒くらいの時代(グヌン・サリの結成が確かこの2年くらい前のはず)。で、当時録音された78回転のSP盤から抜き出したもの、らしい。

そう云うわけでまぁ、音楽として楽しめるような音質は期待してなかったんだけど、鳴らしてみてびっくり。ぼく程度の耳なら充分、楽しく聴けるくらいの音質が確保されているのだ。
そりゃ新しい技術を駆使した近年の録音と比べるわけにはいかない(このへんとかこのへんとかとはね)。原盤のコンディションによるのか、雑音の入り方もまちまちだし、曲によってはゴンが聴こえないとかクンダンがもこもこしてるとか云うのもある。あるんだけどともかく、それはそれとして音楽として楽しめる水準の音が聞こえてくるのがすごい。

で、そうやって録音されている演奏なんだけど。これが、どの曲もコンパクトなんだけど、とても楽しいのだ。ゴン・クビャールの面白さ、みたいなものが、素朴なかたちではあるけれど、ちゃんと詰まっていて。
そのあたり、本質は変わっていない、変わらないのだな、みたいに思える。伝統の力、みたいなのもあるかもしれないけれど。

国内で簡単に手に入るガムランの音源と云うのは限られていて、しかも地理的にはウブド・プリアタン近辺、グンカの周辺、みたいなものに偏重している(厳密に云えばともかく、グヌン・ジャティもヤマ・サリもグンカ関連と呼べば呼べる)。でも、このCDにはそもそもウブド郡を擁するギャニャール県の楽団が入っていない。バリ島の県はもともとそれぞれが王国だったので、まぁ「国が違う」わけではあるんだけど。
違うと云ってもゴン・クビャールは北部の発祥で(最初にオランダに滅ぼされて植民地政庁が置かれたのが北部のブレレン王国。そこへ西洋のオーケストラ音楽が入ってきて、ゴン・クビャールの成立にあたってオーケストレーションなんかがインスパイアされた、と云う説を読んだことがある)、そこから広がったので、最後に入っているブスンビウの楽団なんかは元祖に近いあたり、みたいな部分があるのかも。

そんなこともあってか全体として、ぼくの持っているほかの音源では印象がおなじブレレン県にあるテジャクラのゴンに近い。このへんはまた、コミュニティ外の人間に聴かせる芸能としての芸術的洗練が強く意図されているわけではない、みたいなところが関連しているのかも知れない。このことそのものはぜんぜん悪いことじゃない。ゴン・グデから連なるクラシックな印象はやっぱりあるし、ある意味なまなましい感触もある。
いや、いずれにせよ、例えばヤマ・サリの緊密な構成力やグヌン・サリの疾走感を味わおうと思ったら、聴く側にも相応の心構えと緊張感が要求される部分もあるわけで。1曲がだいたい3分くらい、と短いこともあって、音質さえ気にならなければ、これなら日常的に気軽に聴く、みたいなのもありかも知れないな、みたいに思った。


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