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略語だのカタカナ遣いだの [よしなしごと]

kikulogのフクシマと書かないと云うエントリを読んだ。

例えば略語と云うのを、あまり使わないようにしている。
好きか嫌いか、と云うとどちらかと云うと好きだし、音楽がらみのエントリなんかを書くときにはジャーゴン的な意味合いを含めていくらか積極的に使ったりもする。ただ、使うときには意識して、と云うのが原則。

略していない用語、と云うのは、一応は全きものとして、それが指し示す対象についてのすべての側面を、意味合いを示すことになる。まぁ固有名詞については、原則は。その固有名詞が、使われていくうちに特定の意味合いを強く帯びることはあるけれど、まぁそれは避けられない。その場合にも、特定の作為を示さないためにも、不要な場合には略語を使わずに書くことを選ぶことが多い。無用な色づけを、自分の発言に帯びさせないために。

略語を使う、カタカナ書きにする(言及先エントリをお読みでない方のために説明すると、これは「カタカナで一般に表記されない日本語の単語を、あえてカタカナで書く」と云う行為のこと)。
基本的にそれは、もともとの言葉が持っていた複数の意味合いから、特定の側面を抽出してそこを強調しようとする行為、だと思う(まぁ略語の場合、原語が長過ぎて、と云う場合もあるだろうけど)。だから略語やカタカナ書きを使うことを選択する、と云うのは、当然ながらポリティカルな行為、と云うことになる(ちなみにこのカタカナ書き、と云う手法をはじめて見たのは、数年前によんどころない事情があって政治的な内容を扱う複数のブログを読む羽目に陥ったとき。なるほど、こう云う小技があるんだ、とかちょっと感心した。「コイズミ」とかね。実質的になにも云ってなくても、小洒落た揶揄をしている気分になれるみたい)。

福島、と云う言葉が包含する、多様な意味と側面。本来あったものと、この半年ばかりのあいだに付け加えられたもの。
それを「フクシマ」と表記した際に、切り捨てられるものと、抽出されるもの。こう云うことに関しては、言語を用いてなにかを表現しよう、伝えようとするにあたっては絶対にナイーヴであってはいけない、と思う。
フクシマとカタカナで書いてしまうのは、やはり一種の鈍感さであると思う。その言葉には、現にそこに住む努力をしている人たちがいるという視点が欠けているのではないか。
欠けているのではなくて、これは、切り捨てている、と云うことであるはずだ。
切り捨てること、の是非は措く。いや、切り捨てる行為に対する個人的な思いはあるけれど、その行為は本来自覚的に、ポリティカルに選ばれたスタンスであるはずで、そうである以上切り捨てることそのものに対する評価はこのレイヤーにはない。
ただし、そのスタンスをポリティカルに選択した、と云う自覚なしにフクシマと云う表記を選んだひとがいるとすれば、そのひとはまさに鈍感と云う形容が高精度であてはまる種類の人間だと思うし、願わくばことばを用いてなんらかの表現を行おう、だれかになにかを伝えようと試みることは今後避けてほしい、と衷心から願う。

ちなみに言及先のエントリについて、ブックマークで「言葉狩り」と云う評価をしているコメントをいくつか見かけた。まぁなんと云うかそう云う行為がまさに、上で書いた「ポリティカル」な言説、と云うもののわかりやすくて適切なサンプル、と云うことになろうかと思う。
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コメント 16

Jem

疲労が蓄積しつつある今日この頃、皆々様には如何お過ごしでしょうか。

つ~か、もう笑うしかないって。
by Jem (2011-08-08 00:33) 

pooh

> Jemさん

もう、なんて云ったらいいのか。
by pooh (2011-08-08 07:12) 

pooh

こう云うときにもさすがの青プリン先生。

https://twitter.com/#!/HayakawaYukio/status/73492134136778752

「自らの政治性に対してナイーヴ」と云う、善し悪しはともかくとしても非常に珍しい資質の持ち主でいらっしゃることだなぁ。
by pooh (2011-08-08 21:07) 

Jem

青プリン先生は、ときどき(市場調査のために)まとめサイトを覗いてます。ある方面のトレンドがわかってなかなかに便利です。
by Jem (2011-08-09 20:16) 

pooh

> Jemさん

ずっとそのトレンドと闘ってるんですけどねぇ。
いや、ぼくが、ってわけじゃないですが。
by pooh (2011-08-09 22:56) 

ネコスケ

私も気になってました。偽科学をあえて「ニセ科学」と言ってしまったときに、しまったという思いがよぎったものです。

「ヒバクシャ」や「ヒロシマ、ナガサキ」を世界に発信したい。それと同じくらい「ニセ科学」を世界に発信したい、という気持ちがないと言ったら、嘘になりますという気持ちは僕にはありません。

あえて言うならば、カタカナに見せるコダワリは、そのひと本人にとって、なにか特別な意味合いがあるということです。決して、ナイーブだからではないと思います。

ここでは、フグシマというのは、不正解です。正しく怖がるためには、「不遇死魔」、ないし、「ウツクシマ、浦島」というのも、正解には程遠いのは言うまでもありません。
by ネコスケ (2011-08-12 18:26) 

pooh

> ネコスケさん

いらっしゃいませ。

なにをおっしゃりたいのか、いまひとつよくわかりませんが。
「あえて」云うことの是非を、ぼくは問うてはいません。
by pooh (2011-08-12 18:59) 

ネコスケ

>>なにをおっしゃりたいのか、いまひとつよくわかりませんが。

僕はpoohさんの言いたいことがイタイほどよく分かるというつもりはありません。ただ、poohさんのエントリーで、「フクシマ」とあるところを、すべて、「ニセ科学」と換えると、それはそのまま菊地誠さんへのヒニクになっている点で、非常に興味深いという感想を抱かされただけの話ではあるのです。

分かりますよ。誰だって、そんなつもりはさらさらないことを。ただ、その振りかざした論理が結局、自分のことを棚にあげて、ミイラ取りがミイラになるようなことが繰り返されていることにフラクタルの真髄を見出そうとするものでもあるのです。

多少、分かりやす言うならば、中国では、直接、政府批判は難しいけど、反日という形を使って間接的に政府批判を行うように、poohさんが同じようなことを「ニセ科学」という言葉の代わりに「フクシマ」という言葉を使って試みようとしているのではということくらいは、想像に難くないことではあるのです。
by ネコスケ (2011-08-12 22:18) 

pooh

> ネコスケさん

> 「フクシマ」とあるところを、すべて、「ニセ科学」と換えると、それはそのまま菊地誠さんへのヒニクになっている

べつだんそう云う意図はありませんし、そうなっているとは思いませんが。
菊池誠をはじめとして、ニセ科学に対する議論に継続的にコミットしている論者は、おおむねそのことばが持ちうる意味合いや派生しうる効果(およびそこに含まれる自分自身の作為)にそうとう意識的だと思っています。
もちろん、そう云う意味合いを派生させたくない、と云う場合に、ネコスケさんが「ニセ科学」と云う言葉を使わないよう留意する、と云うことであれば、その判断は適切であるかと思います。
by pooh (2011-08-13 00:24) 

Judgement

 上のような記事を書いた人が、まさにそのコメント欄で、名前が明らかな方をあえて「青プリン先生」と言うのはいかがなものかと思うよ。
 私ならともかく...。

 「もともとの言葉が持っていた複数の意味合いから、特定の側面を抽出してそこを強調しようとする行為」が「当然ながらポリティカルな行為」ならば、元々の人が持っている複数の意味合いから特定の側面を抽出してそこを強調するような『あえてあだ名で呼ぶ行為』も同じじゃない?
(私もあだ名はよく使うけど、私自身はそれを「ポリティカルな行為」と言う気はない)

 この話の流れだと、poohさんは「ポリティカルな行為」という自覚の上で「青プリン先生」とおっしゃっているのか、あるいは”鈍感”なのか、という事になってしまわないかと思う...。

 それはともかく、遅ればせながらお久しぶり&ご無事で何より。
 街が早く復興される事をお祈り申し上げます。
 お互いに、ですけどね。
by Judgement (2011-08-16 23:29) 

pooh

> Judgementさん

ひょっとして、いらっしゃいませ、でしょうか。

> 遅ればせながらお久しぶり&ご無事で何より。

ありがとうございます。
どうもなんか、エントリをあげるのが、生存報告的な意味合いを持ってしまいますよね。
震災とは直接関係はないのですけど、個人的にけっこう生活の状況が変わってしまったのもあって、あまり積極的な運営ができる状態ではなかったりしています。

> 『あえてあだ名で呼ぶ行為』も同じじゃない?

おっしゃるとおりです。いや、じつは「青プリン先生」と云う書き方を選択した時点では(コメント欄、と云うこともあって読むひともある程度限られるでしょうから)単に本名を書きたくなかった、と云うほうが強かったんですけど、もちろんそこにはそのあだなが用いられて来た文脈があるわけで、なのでそこにポリティカルな文脈は存在します。
これまで早川氏にはほとんど言及してこなかったわけですけど、その彼に対して「青プリン先生」と云う呼び方をするひとたちと、ぼくが基本的にはその言動に対する見解を共有している、と云うニュアンスを示すことにもなりますよね。

その意味で、ある著述のなかでの用語の選択は、その意味合いの濃淡こそあれつねにその主張に寄り添うかたちでポリティカルではあるんだと思います。なので、

> 私自身はそれを「ポリティカルな行為」と言う気はない

こう云うことも、ほんとうはないんだと思います。もちろん前述のとおり、文脈に従うかたちでの濃淡は存在しますけどね。そこをどう自覚して著述するか、と云うようなことかと思っています。
by pooh (2011-08-17 05:20) 

Judgement

 なるほど、「青プリン先生」もポリティカルであると。
 それを了解した上で言えば...
 「単に本名を書きたくなかった、と云うほうが強かったんですけど、もちろんそこにはそのあだなが用いられて来た文脈」があれば、”ポリティカル”と言えるなら、福島をフクシマと呼ぶ人にもその程度の文脈はあるんじゃなかろうか。濃淡が存在しても、あればいいんでしょ?
 そこを他者にはいきなり「鈍感と云う形容が高精度であてはまる種類の人間」とまで言っちゃうのはどうだろう。

 まぁ、そこでpoohさんは「自覚」を取り上げるんだろうけど、実際にpoohさんが問題にしているのは「自覚しているコトが分かるように書く」かどうか、なんじゃない?だとすれば、やっぱ「青プリン先生」はねぇ...。


 あと、まぜっかえしに聞こえるかもしれないので、聞き流してもらってもいいんだけど...「ポリティカル」って何?
 辞書的に言えば「政治の・政治学の」となるけど、そんな大それた意味で誰も「あだ名」は使わんでしょう(少なくとも私は)。

 多分、もっと別な意味でpoohさんは使っているのだろうけど、そこで「○○(poohさんの意図)」をあえて「ポリティカル」と表現するのは、上のテーマとは逆に「特定の側面を抽出してそこを強調すべきところで、複数の意味合いを持つ言葉を使う」という話になるけど、それも「だれかになにかを伝えようと試みる」時には避けるべきだと思うんだな。


...久しぶりに他ブログに書き込んだので、しつこくなっちゃった。

ま、私としてはよそ者に"フクシマ”と言って欲しくない点では賛成だけどさ。
(私にとっては自虐ネタ)
 ただ、矛盾を感じるのは、この話題を取り上げる事で”フクシマ”という単語が記事中に高い頻度で出現するわけで、それって『「福島をフクシマと呼ぶ」と言う方法があることを広めてない?』とも思わないでもない。
 「それは批判の都合上仕方ない」のも分かるけど、自分が振っているのが「諸刃の剣」である事を自覚しているのか、自覚した上で何か対処を考えているのか、というあたりが気になるとこかな。
 フクシマ県民としてはね。
by Judgement (2011-08-17 10:04) 

pooh

> Judgementさん

どうも複数の角度からのご意見を同時にいただいているようなので、逐語的に返答すべき、なのかもしれないんですけど、長くなるのでそこは勘弁いただいて。

> 濃淡が存在しても、あればいいんでしょ?

そう思いますよ。
で、それを自覚して、その表現の及ぼしうる範囲に責任を持って用いれば、それでいいのだと思います。もちろん、どんな言葉がどのタイミングでどんな影響を及ぼしうるか、と云うことについてはその状況で変わってくる部分ではあるのですが。
(ちなみにこのエントリは、言及先のkikulogのエントリの内容から文脈的につながっています。その要素を、Judgementさんが踏まえていない、とはまぁ思いませんが)

> 「ポリティカル」って何?

そこがうまく手短に書けるようなら、適切な日本語を使うところなんですけどね。「特定の結果をもたらす意図を内在させた」みたいな感じですかね(内在、が重点です)。

> それって『「福島をフクシマと呼ぶ」と言う方法があることを広めてない?』

単語ではなく文章まで読んでくださる方ならまずそうは読まないでしょうし、そうでないひとに(広める、と云う形容が適切な水準で)伝わるほどここは読まれていませんよ。いや、現実的に。
どんなことばも、それをウェブ上に放り出すこと事態が諸刃の剣たりえます。対処方法を準備しているか、と問われれば、それはその時点で、言論の範囲内で、としかお返事できませんけどね。
by pooh (2011-08-17 10:25) 

きくち

カタカナで「ニセ科学」と書くのは、もちろん政治的です。カタカナなのは意図的で、「偽」とは違うニュアンスを含ませています。

by きくち (2011-08-23 03:08) 

pooh

> きくちさん

そう云う議論はずいぶんしてきたんですけどね。
by pooh (2011-08-23 07:16) 

pooh

まさにどうでもいい話だけど、Yahoo!のリアルタイム検索にカタカナで「キクマコ」と放り込むとけっこう面白い。

http://realtime.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%82%AD%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%82%B3&fr=mozff&ei=UTF-8&md=t

ひらがな表記の「きくまこ」自体は本人も昔から使ってるから、そんなのばっかりじゃないんだけど、なんか「カタカナで表記することでなんらかの見識の表明をしている」みたいな気持ちになれるひとってそうとう多いみたい。
こう云うひとたちって「なんでカタカナで書くの?」みたいに訊いてもたぶん回答は帰ってこないんだろうな。って云うか「回答しなくてもいい」から選択してる表記なんだろうし。
by pooh (2011-11-03 07:39) 

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