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根拠 [よしなしごと]

som_tamさんのこういうときは重なるものでと云うエントリを読んだ。

この「研究論文」はどこに発表されているのか。「何百件もの臨床研究」のデータはどこにあるのか。
いやまぁ、ホメオパシーは西洋においてはメジャーな代替医療なので、実際には多くの研究論文・データは存在するわけで。だからこそ、シャンらのメタ・アナリシスに重みも生じるわけなんだけど。
当の論文のどこに欠陥があって欠陥論文というのか、指摘の論旨を目にすることができない。「権威」と言われてもどこの誰かもわからない。
このあたりの事情は、nobuさんがホメオパシーと朝日の戦い、ますます激化の一途へと云うエントリでまとめられている(ちなみにこの時期の「ぐり研ブログ」さんのエントリは、この夏に朝日新聞が絡んだホメオパシー関連の情報について手際よくまとめられているものが多くて、なんと云うか、資料的価値が生じているように思う)。早い話、欠陥を指摘しているのはホメオパシー陣営のお身内、と云う話ですね。
この目隠し状態で「ふ〜ん、ホメを批判するほうが変だったんだ〜」という意見に傾く人がおられたらお目にかかりたい(関係者除く)。
このへんの感想は、ぼくがこっちで書いたようなこととも重なってくるのかもしれないけど。ホメオパシーを「信じて」いないひとたちにはあまり有効ではないのかもしれないけど、なんとかしてホメオパシーを「信じ続ける」理由を探している現在の顧客に対しては、それなりの意味はあるのかもしれない。まぁその行き着く先は蛸壺化と云うかカルト化と云うか、なのかもしれないけど、地下に潜ってくれるようならそれはそれでいいや、とか個人的には思う。
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som_tam

こんばんは。som_tamと申します。トラックバックを頂き、ありがとうございます。
早速、nobuさんの「ぐり研ブログ」を読んできました。非常に分かりやすくまとめられていて、勉強になります。
どうやら寅子氏がいう「権威」が誰をさすのか、おかげさまで見当がつきました。「同類じゃねえか!」には大いに笑いました。

二重盲検法ではホメオパシーの有効性は否定されている、とだけは色んな方のブログで先に拝見していたもので、当のホメオパスの言葉に対し、私は大変疑問に思ったものです。
しかし、ここで教えてもらったエントリなどを読む限りでは、後に否定されている論文やトンデモ雑誌にしか掲載されなかったものを指しているに過ぎないようですね。

それと、「たった1つのホメオパシーの有効性を否定する論文」と寅子氏が主張している箇所についても、どこが「たった1つ」やねん、と疑問に思います。
関連の記事などを読んでいても、出鱈目が多すぎて驚きの連続ですが、引き返せない人は自分で目隠しをしてでも、見たくないものは見ないのかもしれませんね。

by som_tam (2010-12-21 00:01) 

pooh

> som_tamさん

いらっしゃいませ。

ホメオパシー団体の反論の多くは、ふつうに読むと「なんでこれが反論になってると思えるんだろう」なんて感じるものだったりします。ただ、それが誰に向けられたものか、と云う部分までを考えると、それはそれで意味があるのかも知れません。

このあたり、moon-3さんがこちらのエントリでお書きのことなんかも頭をよぎります。
http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10632492405.html
by pooh (2010-12-21 07:33) 

黒猫亭

>>ホメオパシー団体の反論の多くは、ふつうに読むと「なんでこれが反論になってると思えるんだろう」なんて感じるものだったりします。ただ、それが誰に向けられたものか、と云う部分までを考えると、それはそれで意味があるのかも知れません。

以前のエントリでうさぎ林檎さんが言及されていた「ホメオパシー子育て日記」の「由井先生の30ページにおよぶ推薦者まえがき」を、うさぎ林檎さんがミクシィ日記で紹介されていたので読んでみました。

http://jphma.org/About_homoe/jphmh_answer_20101217.html

総じて、宗団内部の結束や社会との軋轢回避を訴えていますね。その現実的な「路線転換」を、例によってたくさんの嘘を交えてトラコパシー理論との整合性を持たせたもの、と謂う印象を覚えました。

この「まえがき」が、現在ホメオパシーの信奉者に向けて盛んに購読を勧めている書籍に寄せられていると謂うことは、或る程度ここに書かれている呼び掛けがそのまま現時点におけるJPHMAの方針だと謂うことでしょう。まあ、何かしらの「現場補正」はあるにせよ(笑)。

moon-3さんが「外部とコミュニケーションを取る語り口と語彙が圧倒的に不足していたのです」と仰るように、由井寅子の主張は少しでもその内容を検証する意欲があれば簡単に論破出来るレベルのもので、ましてや科学者集団に向けてそんな幼稚な強弁を試みてもコテンパンに再反論されるのがオチでしょう。ただ、最初から由井寅子の理論を受け容れ、否定的な情報に耳を塞いでいるような人々にとっては、非常に尤もらしく響く言い方を心懸けていますね。

ですから、そもそも由井寅子の言説は、外部からの批判に向けて反論しているように見えても、殆どはシンパに向けて「批判を完全論破した」と謂うポーズをとることが第一の目的なんじゃないかな、と邪推してしまいます。

必要なのは、たとえ嘘を交えていても「外部からの批判に答えて完全論破した」と謂うストーリーに則ったテクストそれ自体なのでしょう。それは勿論、嘘を足掛かりに自分に都合の好いような筋書きをでっち上げているのですから、全体として出来レースの嘘以外の何物でもありませんが、最初から嘘を検証しようと謂う意志のない相手にとっては意味のある、そして必要な言説ではあります。

由井寅子は学術畑の人間ではなくマスコミ出身と謂うことですから、自身の主張を表現する手段として「プレゼンテーション」以外の手法を識らないのだと思いますし、結局「プレゼンテーション」と謂うのは多少嘘を吐いてでも相手を納得させて言いくるめればそれで好いのですから、彼女の言説は元々「興味を持っている相手を言いくるめる」と謂う方向性に特化した性格を持っていて、批判的な相手に対して客観的妥当性を尺度に正否を論じ合うと謂う性格のものではないと思います。

つまり、最初からストーリーとシナリオがあって、その方向性に則って恣意的に材料を継ぎ接ぎして作った「物語」としての性格があるわけです。その意味で、「物語」を語る対象とは、poohさんが「なんとかしてホメオパシーを『信じ続ける』理由を探している」と表現された人々でしょう。

そのような人々は、すでにホメオパシー批判のルーティンが確立されている現状では、どう足掻いても自力では「信じ続ける」理由を創案出来ない状態にあるわけですから、自分たちのカリスマが世間の無理解や悪意的な罵倒を撥ね退けて堂々とホメオパシーの正当性を立証してくれた、と謂う物語に意味があるわけですね。それが嘘だろうが何だろうが。

>>まぁその行き着く先は蛸壺化と云うかカルト化と云うか、なのかもしれないけど、地下に潜ってくれるようならそれはそれでいいや、とか個人的には思う。

普通は一般的な組織のカリスマを捕まえて「教祖」呼ばわりしたり、その支持者の集団を指して「宗教教団」呼ばわりするのは単なる罵倒表現になってしまいますが、トラコパシーは完全に新宗教としての性格を具えているし、由井寅子のパーソナリティや立ち位置はまさに「教祖」としか表現出来ないし、ホメオパスと信奉者たちはまさに「宗教教団」としか表現出来ない性格を有していると謂うのがオレの意見です。

由井寅子の言説は一般にだらだら長いのが特徴で、その辺はオレもあんまり人のことは言えないのですが(笑)、この人の場合、相手に何も言わせず高圧的かつ一方的に自分の言い分を滔々と並べ立てると謂う押しの強さからそう謂う特徴が表れるのだと思いますし、語るに連れて自分の言説に自己陶酔する部分もあるでしょう。

インナーチャイルドなんてアイディアを採り入れる辺り、相当自己愛の強い性格だと謂うこともあるでしょうし、他人から崇拝されるのが大好きでもあるでしょう。その意味では或る程度金銭以外の対象にも執着しているところもあるんだと思いますが、ビジネスの構造を視てみると流石になかなか抜け目がない。

前掲の「まえがき」の真意を憶測するなら、尖鋭な通常医療否定と謂う性格は勢力を拡大する過程では一種の急進性が必要でも、一定の足掛かりを得た現時点でもうそんなに仮想敵を設けて闘争する必要はないし、逆に社会との軋轢がこれ以上問題視されるとそれこそ世間から集中的なバッシングを浴びて一気に潰されてしまうかもしれない。

朝日アピタルくらいなら興味のある人しか目にしない媒体だからまだマシですが、もしもTVや週刊誌が一斉に喰い附いてきて大叩きが始まったら、もう再起の目がないくらいに潰されてしまうのは、十数年に亘ってTV制作に携わってきたと謂う経歴を持つ彼女自身がよく識っている世界でしょう。

そこで表向きには穏健に軋轢を解消し、通常医療と共存するポーズをアピールする、当初のカジュアル路線に若干戻して、広く薄くと謂う形で再浸透を図る、と謂う路線に転換したものと視られます。

で、これって要するに教祖の逮捕に至るまでの一連の事件後のオウム真理教の手法と同じですよね。社会悪の表出の仕方が無差別テロと謂う極端な形にならなかっただけで、すでにホメオパシーの悪影響で死者が出ているのですから、少なくともライフスペースレベルかそれ以上の有害性を発揮していたわけで、その点でもやはり「カルト」と表現するのが妥当かな、と思います。

その集団の構造を視ても、在家→出家→教団幹部→教祖と謂う構造が、一般信奉者→ホメオパス→JPHMA幹部→会長と謂う形でそっくり再現されていますし、もう少し括りを緩く捉えれば、悪徳商売一般の収奪の構造と謂う表現も出来ます。

こう謂うカルト的組織が地下に潜伏して何をするかと謂えば、まあオウムのように組織テロに趨ると謂うことは考えにくいですが、集団内部での同調圧が男性に比べて高い女性の集団に深く静かに浸透していくと謂う選択肢がまず考えられますね。

中でもやはり「ママ友」のような母親同士の集団と謂うのは、一種一般社会との接点が薄い場合が多いので外から視るよりもっと強い同調圧が働くようですから、そちら方面で信奉者をオルグしていくと謂うのがありそうなパターンでしょうか。集団内部の同調圧で勢力を拡大していくと謂うのは、新宗教の常套手段です。

そうすると、依然としてトラコパシーの最も深刻な悪影響は子供に対する医療ネグレクトと謂うことになるでしょうから、自己決定権を持たない児童の人権被害が最大の問題性になることが予想されます。だとすると、ホメオパシーのアングラ化に関しては、愚行権を行使する成人に対して「死にたい奴は勝手に死ね」とも言っていられないことになるのかな、と謂うのが現時点でのオレの意見です。

もうすでにアトピー治療の分野に色気を示していると謂うことは、そう謂う懸念も満更的外れではないように思いますし、たとえばアトピーのような苦痛や不快感の大きな疾病で医療ネグレクトが起これば、一過性の健康被害だけではなく性格形成にも大きな影響を与えかねないですから、子供の一生が掛かっていると謂う言い方も出来るでしょう。
by 黒猫亭 (2010-12-21 10:48) 

som_tam

>poohさん
リンク先を興味深く拝見してきました。
私が読むと首をかしげるような論旨の主張は、あくまで内向きに発せられたものであるらしいことがよく分かります。

それにしても「あなたは何もわかっていない」と連絡を絶つ、ですか・・・・。
ほんとうのことが分かっているのは私たちだけ、と外部や社会との交渉を断つ方向に進めば、今後ますますカルト化する条件は揃ってくると私も思います。
「私たちは攻撃されている」ようなことを既に言っていますし。


by som_tam (2010-12-21 15:32) 

som_tam

>黒猫亭さん
リンク先読みました。何というか、、、ご詠歌のようです。ある種の物語を求める人には甘美な歌なのかも知れません。
私にとっては矛盾する事柄が並列されて、ただただ意図がつかみにくい文章に過ぎないのですが、これは読みたいところを便利に選び取って読んでくれる相手に対しての文章なんですね。

>で、これって要するに教祖の逮捕に至るまでの一連の事件後のオウム真理教の手法と同じですよね。
の文章からはじまる、オウムとの類似性かつカルトと定義するに足るとの説、一言一句同意します。

うまく言えるかどうか今ひとつ自信がありませんが、ホメジャにとって拡大期に必要だった急進性が不要になっても、いまだに「陰謀を駆使する西洋医療および儲け主義の医者」「世界レベルで私たちを追い込む製薬会社」などの無茶な(笑)仮想敵を設けて闘争し続けないといけない理由は、内部にむけて純粋な美しさを湛え維持して行かないと回ってゆかないその体質にあるのだと、私は思っています。

>中でもやはり「ママ友」のような母親同士の集団と謂うのは、一種一般社会との接点が薄い場合が多いので外から視るよりもっと強い同調圧が働くようですから
強い同調圧、確かにありますね。

親しい人ではないのですが、ホメオパシーをやっている人たちには、独特の「おけいこごと臭」がまつわっている、と感じたことが何度かあります。
身内感覚と言うか、中の人たちにだけ通じる言い回しや肌触りというか。

その延長のようなブログや日記もネットには散見します。
心配なのは、例えばですが、その集団中のひとりの子供がなにか病気を患っているとして、

「これって、(子供)くんひとりが苦しんでるのとちゃうと思うねん。お母さんも含めてうちらみんなが今試されてるって思うねん。大変な時やけど、薬を使わんとのりこえたら見えるものがある、うちはそう思うねん、一緒にがんばっていけへん?」
などと言われることが絶対ないとは言えないこと。

発言はどうあれ、実際の対応を見る限りでは、病院にどの段階で委ねるかのガイドラインもないように見えますし。
もともとから深く狭い親交があった場合、こういう物言いや、「ほかのお母さんたちよりすごいみたいなおけいこごと」のお誘いについて、きっぱり振り切れる人がどれだけいるだろう。
憂慮します。

ヨーロッパと同じように、ホメは笑い話にできるくらいのトンデモという認識が定着しちゃえば、一番の抑止力になっていいと思うんですけどね。


by som_tam (2010-12-21 16:40) 

うさぎ林檎

こんばんは。

今年のコングレスにこんな感想がありました。

>洞爺にやはり、養生園が必要だと思います。水、食べ物、手当てなどを行い、本来の自己治癒力を想い出す場が、現代の人には、必要だと思いました。

おそらく、こんな発言が団体側からあるのだと思います。
ホメジャの登記目的にも「宿泊施設の経営」「病院の経営及び施設管理」があるので、前々から危惧していたのですが……。

最近、ホメオパシー研究所の「熱海研究所」とは別に函南に土地を押さえていて
近々「ホメオパシー自然農園 函南」をオープンするつもりの様です。
ホメジャのサイトでは名称が出ていますが、まだ中身はありません。
http://www.homoeopathy.co.jp/index.html

私は自然農園と称している場所には宿泊施設を作る可能性が大きいと考えています。
最低の話ですけど、予め医師のチェックが入ってホメで養生するだけの体力がある人間だけが逗留してくれるのなら良いのだけれど、と思います。それぐらい悪辣であってくれたらまだ深刻な健康被害は出ないでしょう。

でも多分違うでしょうね。
由井氏を中心とした医療知識の欠片もないホメオパス連中が施療して、似たようなメンタリティーのクライアントが血まみれの子どもを抱いて笑顔で励まし合う。
そんな地獄絵図が浮かんでならないんです。
by うさぎ林檎 (2010-12-21 21:37) 

pooh

> 黒猫亭さん

> 殆どはシンパに向けて「批判を完全論破した」と謂うポーズをとることが第一の目的なんじゃないかな

ぼくにも、そんなふうに思える部分があります。
判断の軸足を「信じる・信じない」に置く相手方を対象とする限り、それはそれで戦術的に無意味、ではないわけですよね。

> インナーチャイルドなんてアイディアを採り入れる辺り

うむむ。でも「インナーチャイルド」って概念は、船井幸雄系の言説ではけっこう使われたりもするんですよ(船井系とホメオパシー・ジャパンが関係がある、って話じゃなくて、ある種の言説では使い出がある、と認識されている用語だ、って話で)。

> ホメオパシーのアングラ化に関しては、愚行権を行使する成人に対して「死にたい奴は勝手に死ね」とも言っていられないことになる

あぁ、これはたしかにそうです。ぼくはこのあたり、ちょっと把握が安直すぎる傾向があります。気をつけないと。
…うむむむ。ここはどう考えるべきか。この層に届くメディアはなんなんだろう。
by pooh (2010-12-21 22:07) 

pooh

> som_tamさん

> あくまで内向きに発せられたものであるらしいことがよく分かります。

発信者側の意識は、じっさいのところはよくわからないんですけどね。ただ、その意味では有効、みたいなおはなしです。

> 「私たちは攻撃されている」ようなことを既に言っていますし。

認知的不協和も生じてくるでしょうし、このへんはもう難しくて。もう事実上ウェブ上の議論や情報発信でなんとかなる範囲を超える(ように、ぼくには思える)ので、もう直接対話ができる場所のひとに期待するしかないようにも思います。
だったら、そう云うひとたちの手の届くところに、利用可能な情報を置いておく。ぼくなんかができることってのは、せいぜいそれくらいかな、みたいに思ったりしています。
by pooh (2010-12-21 22:07) 

pooh

> うさぎ林檎さん

> おそらく、こんな発言が団体側からあるのだと思います。

コミューンをつくる、って展開ですか。なんかまたツツイ者の悪い血が騒ぎそうです。
って云うか、どうなんだろうな。エコフェミニズムの文脈とかその俗流解釈とか、関係してるのかな(よくわからない)。

> 由井氏を中心とした医療知識の欠片もないホメオパス連中が施療して、似たようなメンタリティーのクライアントが血まみれの子どもを抱いて笑顔で励まし合う。

うわあぁぁぁぁぁ。
しかも互いに「自己責任」を確認しあうわけですか。
by pooh (2010-12-21 22:13) 

黒猫亭

>som_tam さん

ご意見ありがとうございます。エントリ本文で引用されたsom_tam さんの反応と謂うのは一種健全な懐疑だと思うんですね。ホメオパシーについて一般的に流通している情報を持っていて、その上でホメジャの言い分を聞くと「それって具体性のないポジショントークじゃん」と謂うような感想を覚えるのが普通だと思うんですよ。

ただ、最初からホメオパシーに興味を持っている人は、客観的に相対化して言説の信頼性を秤量したいわけではなく、「ホメオパシーって良さそうなのに、なんかバッシングされてるみたい」と謂う不安があって、まず前提としてその不安を払拭する意見を求めていると謂うバイアスがあると思います。

たとえばsom_tam さんの場合は、最初から批判的な姿勢において懐疑した結果、こうしてpoohさんが採り上げて情報を紹介すると謂う形で当初の懐疑を考察する材料を得られたわけですが、そう謂う人々はどうするかと謂うと、たとえば知恵袋なんかで質問したりするわけですね。

すると、目敏くサクッと信奉者がアンサーを書き込んで「それはこれこれこう謂う信頼出来る学者が言うてるのですよ」とか「ホメオパシーを否定する論文なんてたった一本しかないのですよ」みたいなことを言うわけです。

一方では、批判的な人もその質問を読んで「いやいや、結局その『信頼出来る学者』と謂うのは結局同じ穴のムジナなのですよ」とか「『たった一本の論文』と謂っても、多くの論文を科学的に評価してフィルターに掛けたら否定的な論文しか残らなかったと謂う内容の論文で、その背景にはたくさんの論文があるんですよ」と謂うような書き込みがされるでしょう。

で、質問者がどちらをベストアンサーと判断するかと謂うのは元々の動機に依拠するわけで、表向きは「素人の私には判断出来ませんが、いろいろ意見が分かれているみたいですね」くらいの当たり障りのないコメントを附けて、信奉者の書き込みをベストアンサーに挙げてケリが附くわけです。

結局その質問者は、やりたいと思うことにケチが附いていたから他人に「大丈夫」と言って欲しかっただけ、みたいな動機でしょう。

由井寅子の内向けの言説と謂うのは、すでにホメオパシーを受け容れた人々に対して同じことをしていると謂うふうに言えるでしょう。外部からどんなクリティカルな批判があっても、基本的に教祖が揺らがなければ信者は一定の安心を得ることが出来ます。ですから、「揺らいでいない」「大丈夫だ」と謂うポーズを作る為の言説が成立することには、薄っぺらな嘘であっても意味があるんですね。

>>親しい人ではないのですが、ホメオパシーをやっている人たちには、独特の「おけいこごと臭」がまつわっている、と感じたことが何度かあります。

仰るように、ホメオパシーの信奉者は「何故か」必ずホメオパシーを「勉強」するんですよね(笑)。通常医療であれ代替医療であれ、患者が「勉強」しないといけない医療行為なんてのは珍しいわけですが、皆さん疑問をお感じにならずにせっせと「勉強」に勤しんでおられます。

多分これ、汚い言い方ですが「スイーツ」な心性に近い部分だと思います。一種精神的なセレブ感が得られるんでしょうね。som_tam さんが仰る「ほかのお母さんたちよりすごいみたいなおけいこごと」と謂うニュアンスで、「世界の真実を識っているのは私たちだけ」みたいな優越感が伴うのでしょう。そう謂う心性は窮めて陰謀論と親和性が高いので、「製薬会社の陰謀」とか「医学界がホメを潰そうと目論んでいる」みたいな楽しい御伽噺も受け容れちゃうわけですね。

>>「これって、(子供)くんひとりが苦しんでるのとちゃうと思うねん。お母さんも含めてうちらみんなが今試されてるって思うねん。大変な時やけど、薬を使わんとのりこえたら見えるものがある、うちはそう思うねん、一緒にがんばっていけへん?」

すごいリアルで笑ってしまいましたが(笑)、笑い事じゃないですね。一般社会との接点が薄い集団と謂うのは、自分たちの行いを客観的に相対化して妥当性を秤量すると謂う視点が欠落していますから、「団結してみんなで苦労を分かち合う」と謂うその場の熱狂が得やすいサークル活動がどんどん先鋭化する傾向はあると思います。
by 黒猫亭 (2010-12-22 03:35) 

黒猫亭

>うさぎ林檎さん

>>由井氏を中心とした医療知識の欠片もないホメオパス連中が施療して、似たようなメンタリティーのクライアントが血まみれの子どもを抱いて笑顔で励まし合う。

…嘘だと言ってよバニー…なんて捻れまくったネタは誰にも通じないと思いますが、ホントに冗談じゃないですね、遂に「サティアン」まで作る気になりましたか。どのくらいの規模の施設かは存じませんが、「信徒」を収容する施設まで作られた日には、たとえば「ホメオパシーが原因で家庭不和に陥った母親が子供を連れてそこに駆け込む」みたいな青図も想定出来ますね。

上で申し上げた通り、どうもホメジャのターゲットは依然として母親層なのではないかと思いますので、家庭と謂う「密室」とは別にこの種の「密室状況」が作られると、おそらく犠牲になるのは信奉者の子供なんではないかと謂う懸念が拭い去れません。

インナーチャイルド癒しがどうのとか言っている連中が、子供たちにそんな大きなトラウマを与えるような行為を嗾けていると謂うのは、あまりにブラックすぎてちっとも笑えないジョークですね。

>poohさん

>>でも「インナーチャイルド」って概念は、船井幸雄系の言説ではけっこう使われたりもするんですよ

仰る通り、「好転反応」もそうですが「インナーチャイルド」もこの種のアヤシゲな領域で共有されているパブリックドメインのアイディアではありますね。「採り入れた」と謂うのはその辺の事情を踏まえた言い方なんですが、そう謂う概念を採り入れる個別の事情と謂うのはあると思うんですよ。

トラコパシーの場合、元々理論的に「自分探し」みたいなニーズに迎合する性格があるわけで、心の歪みで魂のあるべき姿が歪められていると謂う考え方は、必然的に本来あるべき自分の姿への気附きを必要とするわけで、それが「愛されなかった子供時代の自分」だと謂うのは、ターゲット層に受け容れられやすい方便だと謂う側面もあるでしょうけれど、多分そのような全体的な理論の性格は主唱者の強い自己愛が反映されているのではないかと謂う推測です。

>>…うむむむ。ここはどう考えるべきか。この層に届くメディアはなんなんだろう。

安直な司法の介入を推進するのも問題が残るんでしょうけれど、親権停止なんかを視野に入れた議論を底上げしていくしかないんですかね。

現代の社会観では、自己決定権を持つ成人の自由選択に対して強制力を持つ法的根拠はありません。その自由選択の権利には愚行権も含まれると謂うのはすでに論壇のコンセンサスだと思うのですが、だとすれば、直接対話によって説得し自由意志に基づいてその愚行を放棄してもらうしかありません。

その場合、言説や議論は刀鍛冶の役割しか果たせないわけで、問題意識を共有する論者が直接当事者として戦うわけにはいきません。それは飽くまで、公的な職種としてそのような人々と対峙すべき立場に立つ人々か、自分の肉親や友人など或る程度責任を持ってコミットしている人間関係においてしか直接当事者として戦うわけにはいかないでしょう。

その当人と何の関係もなく、公にそのような介入をする立場にない人間が、見ず知らずの他人に対して直接対話を挑んで「あんたは間違っている」と説得しても、逃げられてしまえばそれでオシマイです。ですから、議論と謂うのは直接対話によって説得する立場に立つ人々に対して、折れず曲がらず貫通力の高い武器を一口でも多く用意することしか出来ません。

現時点でニセ科学やニセ医療の被害を強制力を持って救済し得る法的根拠があるのは、子供の人権の問題だけなんですね。この点において活発な議論で世論を喚起し社会的コンセンサスを醸成していくことは直接闘争の性格を持つと思うんです。

具体的には、やっぱり危険な出産方法やマクロビなどの健康法、そしてホメオパシーのような有害なニセ医療、これを親の世代が自由意志と自己責任で選択し得るとしても、自分の子供にそれを適用するのは明白な人権侵害なのだと謂うコンセンサスを醸成することが効果的じゃないかと思います。

それはたとえば児童ポルノや淫行なんかの問題と同じことで、未成年にはマクロビやホメオパシーのようなリスクを伴う選択肢を受け容れるか否かと謂う高度な判断能力がないと見做すのが当然ですし、ましてや生まれる前の出産方法については何のコミットも出来ないのですから、法的な意味では人権侵害の強制に当たるでしょう。

親の側の動機の如何によらず、それは社会的に児童虐待と見做すべきであり、それを抑止する為には親権停止や親権喪失も含めた司法の介入が最終的な選択肢として選び得る、そのような社会的認知を醸成していくのが効果的なのかな、と思います。

つまり、親に直接働き掛けて愚行を放棄させ、併せて児童の被害を抑止すると謂うふうに児童の人権救済が従の位置附けになるやり方だと、たとえば社会的風潮の如何によらず一定数自殺者が存在するように、いつの時代にも一定数存在すると思われるこの種のニセ科学やニセ医療に親和性の高い個人の場合には、児童の人権被害は抑止し得ないと謂うことになってしまうわけですね。

しかし、児童が親の愚行の犠牲になると謂う事態は、とりあえず一刻も早く解消の道を模索すべき事柄だと思うのです。残念ながら、ニセ科学やニセ医療にハマる個人を減らすことは一足飛びに実現出来ることではありませんが、児童の人権侵害の抑止を必ずしもそれとセットにして考えることはない、親が或る程度の苦痛を覚えるのは自業自得なのだから、まず児童を救済すべきではないか、と謂うのがオレの立場です。
by 黒猫亭 (2010-12-22 03:36) 

pooh

> 黒猫亭さん

> 「インナーチャイルド」もこの種のアヤシゲな領域で共有されているパブリックドメインのアイディア

どうもなんかユングの俗流解釈的なニュアンスが漂っていて、きわめて個人的な意味でもとても不愉快だったりします。と云うか、これが暗示的にユングの翻案なら、明解にオカルトとも呼べるわけなのではっきりしていい、とも云えるんですけど。

> 全体的な理論の性格は主唱者の強い自己愛が反映されている

ここのところははっきりと云えるかどうかわからないですけど、いずれにしても「自分のことしか考えていない」ロジックではあるように感じます。

> 現時点でニセ科学やニセ医療の被害を強制力を持って救済し得る法的根拠があるのは、子供の人権の問題だけなんですね。この点において活発な議論で世論を喚起し社会的コンセンサスを醸成していくことは直接闘争の性格を持つと思うんです。

この視点、いろんな意味で重要だと思います。
例によって、急がずゆっくりと醸成させてください。
by pooh (2010-12-22 07:37) 

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