SSブログ

ホメオパシーは宗教ではない、のか [よしなしごと]

ソフィア&レインさんのホメオパシーは宗教ではないと云うエントリを読んだ。

宗教、と云うものの定義は文脈によってさまざまあると思うけれど、「科学と宗教」と云う対立軸を仮に置いて比較した場合、あるものが宗教である、とされるのは、根底にある不合理を許容する、と云う要素がある場合だと思う。なので、宗教には(最終的には)証拠は必要ない。単に、信じる、だけで事足りる。そしてそれは宗教と云うものの瑕疵ではないし、それゆえに必要とされることもあれば、役に立つこともあるのだと思う。だから「宗教っぽい」みたいな言い回しが否定的な意味を帯びるのは、それはそもそも宗教的であってはいけない、宗教っぽかったらまずいもの、に対してだけで。医療とかね。
ホメオパシーがカルトだと思われている方は多いようですね。
カルトという言葉をニュースで使っているのでしょうか
ホメオパシーをカルトと断ずるような報道を、ぼくはまだ見かけたことがない。もしそのような印象を与える部分があるとすれば、それはむしろかなりの部分、各種報道に対するホメオパシー関係者、利用者の反応に原因があるのではないのかな(ホメオパシー関連団体の報道に対する抗弁を理解して、納得したふりをするとか。それって単にまじめに読んでない、ってだけだよね)。ちなみに別の文脈でホメオパシーとカルトの類似性を論じた地下猫さんの反社会カルトとしてのホメオパシーと云うエントリもあるけど、これは今回の各報道の1年以上前のもの。
ニュースは正確かつ慎重な言葉を用いて報道されるべきだと思います。
効果を肯定した科学論文は数多くあり、実際に恩恵を受けている人々も世界中に多くいます。
このあたりの云い方が、やっぱりまずいんじゃないかな。
じっさいにホメオパシーに効果がある、と云う結論に至った科学論文はたくさんあるようで。でも、現時点でホメオパシーに効果がない、とする科学的な論拠として重視されているのは2005年にランセットに掲載されたAre the clinical effects of homoeopathy placebo effects? Comparative study of placebo-controlled trials of homoeopathy and allopathy.と云う論文(リンク先はPubMed)で、代替医療のトリックでもこの論文は重視されている。で、どうしてこの論文が重視されているか、と云えば、まずはそれがいろんな研究結果の大規模な分析にもとづくメタアナリシスの結果であるからで。結局、論文の数の問題ではないわけで、それを無視するような発言をすると、「カルトっぽくね?」みたいに云われる可能性も増えると思う。
もし禁止されるようなことになれば
お金がないからホメオパシーに頼らなければならないという方々は
治す可能性を失ってしまうでしょう。
単純に費用の問題だけを取り出しても、いまの日本で通常医療よりもホメオパシーのほうが患者側のコストが安くなる、と云うことはまず考えられない(効く、効かないと云う観点からコストパフォーマンスを論じると、もっとやばい)。じっさいに通常医療の負担が大きいとか、そもそも通常医療に使用する医薬品が調達できないとかの理由で、病人がホメオパシーに期待せざるを得ないような状況にある国もあるけれど、それはこの国じゃない。こう云う単純な嘘を平然として口にできる心性は、やっぱりカルトっぽく見える。
安全だからホメオパシーがいいという方々は
選択肢を失ってしまうことになります。
安全だからホメオパシーがいいって云うのは、ホメオパシー業者がユーザーに吹き込んでることだよね。こうやって一面的に利用者の勝手な判断の責任にするようなことを云うから、やばいんじゃない、って思われたりもする部分もあるんだけど。
ホメオパシーはその性質上、カルトとして利用される要素はあるかもしれません。
水が原因物質の記憶をレコードし、それを服用することで
体に気づきを与え、自然治癒力を引き出すなんて
科学で証明できないし、怪しい気がしますものね。
でもホメオパシーそのものがカルトになるわけではなく
ホメオパス(ホメオパシーを処方する人)がカルトにしてしまう可能性がある
ということを
混同すべきではないと私は思います。
この部分に異論はありません。
で、ここまで書いたとおり、お書きのような主張がまさにホメオパシーをカルトにしてしまう可能性がある種類の言説だと思う。多くのホメオパシー関係者が似たような水準の(嘘と信仰告白と責任逃れがちりばめられた)主張をしているので、よけいにそう見える、と云う部分もたぶんある。
薬として考えていいと思います。
では薬事法に従いましょうね。ついでですけど、レメディ販売とオペレーション上切り離されたとしても、ホメオパスの健康相談業務は医師法に違反しないように行われる必要があるんじゃないかな、とか思う。
現代医学でもなぜかわからないけど効果があるから
というだけで使用している薬もあるので
メカニズムはわかっていなくても問題ないのでしょう。
メカニズムはわかってなくても問題ないけど、効果の有無は継続的な検証に晒されてるよ。メカニズムがわからないならなんでもいっしょ、と云う話にはならないわけで、このことは200年前から進歩しないままニセ科学的なロジックでごまかしを続けている療法に対する弁護にはならないよね。
ついでに云うとホメオパシーはメカニズムがわかっていない療法ではなくて、メカニズムも否定されている療法なんだけどね。なぜかわからないけど効果があると云うことにしておきたいのはわかるけど、舌先三寸でそのへんをごまかせるとでも思っているような不誠実な態度がやっぱり、なんかともかくも信じているものを守りたい、みたいな動機を連想させたりする部分もあるのかも。
ホメオパシーそのものは決して宗教でもカルトでもなく
また宗教とリンクさせるべきものではなく
宗教的なものと混同しないようにしたいものです。
これもまぁ同感ではあって。ぜひホメオパシー業者のみなさんが、ご自分の扱っているものやことを宗教的なものと混同しないように(そして利用者に混同させないように)、今後よりいっそう努力してくれればいいなぁ、みたいに思う。

少なくともとりあえず(一読しただけでわかるような)あからさま嘘がある内容をまるで「真実」のように提示するような言説をものしていると、「あぁこのひと、信じるがあまり認知的不協和に囚われているのね」みたいに思われる場合も多いと思う。余計なお世話だけど、逆効果かもしれないよね。
nice!(0)  コメント(14)  トラックバック(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 14

うさぎ林檎

こっちでも、こんばんは。

>実際に恩恵を受けている人々も世界中に多くいます。

あぁ、そうらしいですね。
http://whatstheharm.net/homeopathy.html
by うさぎ林檎 (2010-09-15 23:10) 

黒猫亭

>>多くのホメオパシー関係者が似たような水準の(嘘と信仰告白と責任逃れがちりばめられた)主張をしているので、

端的な成分分析ですね(笑)。チラッとカテゴリーなんかを眺めたり「はじめに」を読む限り、どうもこの方々はこの方面の事柄に対する抵抗感がごく薄くて、ホメオパシーはまだマシな方なのかもしれないとか思ってしまいました。

>>単純に費用の問題だけを取り出しても、いまの日本で通常医療よりもホメオパシーのほうが患者側のコストが安くなる、と云うことはまず考えられない

まあ、「アメリカの小さな町」に住んでおられるそうなので、日本の事情には疎いのかもしれませんね(笑)。

>>では薬事法に従いましょうね。ついでですけど、レメディ販売とオペレーション上切り離されたとしても、ホメオパスの健康相談業務は医師法に違反しないように行われる必要があるんじゃないかな、とか思う。

何というか、本物の医薬品や医療行為に厳しく適用されているような法律の厳格なコントロールは受けたくないけれど、薬だとか医療だとか言い張りたがると謂う、謂ってみれば幼稚で無責任な虚栄心みたいなものがあるんですかね。
by 黒猫亭 (2010-09-16 01:12) 

pooh

> うさぎ林檎さん

まぁ事実があって、それをどう捉えるか、なんですけどね。
ぜったいにホメオパシーが原因ではない、と「信じて」いれば、その理解はなかなか翻らないわけで。
by pooh (2010-09-16 07:31) 

pooh

> 黒猫亭さん

> ホメオパシーはまだマシな方なのかもしれない

200年前には往々にして通常医療よりホメオパシーのほうがまだましだった、と云うのと似たお話なのかも。

> 「アメリカの小さな町」に住んでおられるそうなので、日本の事情には疎いのかもしれませんね(笑)。

それはありそうです。と云うか、言及したエントリのコメント欄ではそちらの角度から韜晦されているようです。

> 謂ってみれば幼稚で無責任な虚栄心みたいなものがあるんですかね。

このへん、よくわからないんですよね。
単に操業上の都合、と云う話ではないかと思ったり。
by pooh (2010-09-16 07:35) 

uncorrelated

ホメオパシーの人々は、治験を通して正規の医薬品にする気は無いようですね。つまり、できないのが分かっているのだと思います。
Shang A, Huwiler-Müntener K, Nartey L, Jüni P, Dörig S, Sterne JA, Pewsner D, Egger M. (2005)も何度も指摘されているから、知っているのでしょう。
by uncorrelated (2010-09-16 21:06) 

うさぎ林檎

こんばんは。

そうですね、ここで紹介されている人達は実際に死ぬまで、我が子を殺すまで「信じて」いたわけですから。

傷口にマヌカハニーを塗って、傷口が壊疽して感染症でなくなった52才のホメオパスの例が載っています(忘却からの帰還様も紹介していました)。
私が高校生の時に大きな台風の直撃があって、その時に落ちてきた信号機に当たって亡くなった方がいました。その時、私はお気の毒だけれど「信号に当たって死んだ」ことに不謹慎なユーモアを感じてしまいました。
このホメオパスにはそれに近い感慨を持ちます、いえ偶然の事故ではない分余計に何だか大声で笑いたくなる衝動が湧いてきて仕方がありません。
by うさぎ林檎 (2010-09-16 21:42) 

pooh

> uncorrelatedさん

いらっしゃいませ。

末端のホメオパスのかたがたとかは、いつかは効果が認められて正規の医薬品として健康保険の対象になることを期待したりしているのかもしれませんけどね。元締めはそんなに甘くないでしょう。
by pooh (2010-09-16 22:07) 

pooh

> うさぎ林檎さん

こう、なんと云うか、黒猫亭さんとあかつき療術所の件でお話ししていたお話とつながるんですけど。なんと云うか筒井康隆のある種の小説を読んでいるときに感じるような、ある種痙攣的なユーモアを感じさせる部分があるんですよね。

ただ、あれはフィクションだから楽しめるわけで。現実に起きたこの手の話にともなって湧き上がって来る笑いは、なんと云うかどうしても絶望的な色合いを帯びてしまいます。
by pooh (2010-09-16 22:13) 

pooh

ほんとは本文中で言及したかったんだけど混ぜ込めなかったkumicitさんのエントリふたつに、とりあえずここからリンク(まぁ言及先のブログ主はトラックバックも受けてくれないみたいなので、読んでもらえるとも思えないけど)。
http://transact.seesaa.net/article/140703068.html
http://transact.seesaa.net/article/160855972.html

あと、tadano--ryさんのところにもリンクしておこう。
http://d.hatena.ne.jp/tadano--ry/
by pooh (2010-09-16 22:13) 

黒猫亭

>poohさん

>>と云うか、言及したエントリのコメント欄ではそちらの角度から韜晦されているようです。

どうもコメント欄のやりとりを拝読する限り、「わかっててやってる感」濃厚ですね。対話が噛み合っていないのも、意図的な論点逸らしなのかな、と謂うふうに感じます。

飽くまで「ホメオパシー全体が悪いのではなく、一部に悪いホメオパスがいるだけ」と謂うことにしたいみたいですけど、二〇〇年前ならともかくこの現代においては、ホメオパスは「ニセ医療者」にしかならないしレメディは「ニセ薬」にしかならないと謂う原理的な問題はスルーしていますね。

その本質的な「ニセ性」が問題なんじゃん、と謂う話なんですが、個別のホメオパスの悪意の問題に還元するのは完全に「嘘」になりますし、一種善意からホメオパスを目指した人々に責任をなすり附けることにもなるんではないかと。

なんか、いろいろヒドイですね。

>>単に操業上の都合、と云う話ではないかと思ったり。

そんなところかもしれませんね。現代におけるホメオパシーが抱える「ニセ性」の問題を華麗にスルーするなら、意図的にその「ニセ性」の欺瞞を利用する気があるととられても仕方がないですね。
by 黒猫亭 (2010-09-16 22:36) 

黒猫亭

>poohさん

書き漏らしてしまいましたけど、poohさんが本文で述べておられる、

>>で、ここまで書いたとおり、お書きのような主張がまさにホメオパシーを"カルトにしてしまう可能性がある"種類の言説だと思う。

…こう謂うことに尽きるように思いますね。何と謂うか、ホメオパシー全体の問題を個別の人間の悪意や個別の言説の問題にすり替えると謂う、まさにその個別の悪意や個別の言説こそが典型的にまずいんじゃん、みたいな(笑)。

>うさぎ林檎さん

>>いえ偶然の事故ではない分余計に何だか大声で笑いたくなる衝動が湧いてきて仕方がありません。

勿論「滑稽な死に方」ってのもあるわけで、滑稽さと対象のシリアスさや倫理性、責任関係と謂うのは必ずしも関係があるとは限らないわけですよね。「信号機が当たって死んだ」方は、その滑稽さにご自身の言動が一切関係していないわけで、完全に偶然のもたらした状況が滑稽さを醸し出しているわけですけれど、ホメオパシーが絡むとそこに「愚かさ」と謂う自己決定の要素が関係してきて、それによって極端な滑稽さが生起しますよね。

ホメオパシーと謂うのは一種の「典型的な愚行」ですから、愚行の酬いが極端に悲惨であればあればあるほど滑稽さは強烈なものとなるわけで、そう謂うふうに人間の生や死の最低限の尊厳すら嘲笑うかのような悲惨な事態が強烈に滑稽であり得ると謂うのは、やっぱり文芸的な想像力の範疇の事柄であってほしいですね。
by 黒猫亭 (2010-09-16 23:33) 

pooh

> 黒猫亭さん

> 意図的な論点逸らし

あくまで不心得な末端のホメオパス個人の責任にするとか、問題を代替医療全部に敷衍してみるとか、「効果がある」ことを前提に「原因はわかっていない」ことにしてみるとか。
このへん結局、結果ありきの論法の表面をとりつくろっているだけで。そう云う手管でどうにかしようとする姿勢が結局はっきり見えるわけで、要は「信じている」ことは最初から曲げないつもりなんだろうな、みたいに思えるわけですよね。

> やっぱり文芸的な想像力の範疇の事柄であってほしい

ギャップが生み出すユーモアの感覚、と云うのはどうしてもあって、ギャップが大きければそれだけ生み出す笑いも大きくなるわけで。でもそれは、笑ってすませることのできる範疇におさまっていてほしいなぁ。
by pooh (2010-09-17 07:35) 

TAKESAN

今晩は。

その種の術語(メタアナリシス)の紹介でWikipediaをリンクするのはあまりお勧め出来ないです。
ここ辺りはどうでしょう。多少小難しい説明でも、専門家が書いた事がはっきりしている文章に張るのがいい気がします。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/meta-analysis/index.html

http://www.ebnutr.gr.jp/2000%5Eebn%5Edata3.html
by TAKESAN (2010-09-18 23:37) 

pooh

> TAKESANさん

あぁ、ありがとうございます。これはわかりやすいや(数式は読めませんけど)。とくに終章はあたまに入れておくべきですね。

> Wikipediaをリンクするのはあまりお勧め出来ないです。

おっしゃる感じはわかります。承知もしているのですが、どうも文章の分量や語調との兼ね合いでやっちゃうんですよね。
by pooh (2010-09-19 06:42) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

トラックバックの受付は締め切りました

関連記事ほか

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。