SSブログ

ホメオパシー報道に対する(当事者でない)ホメオパス団体の反応 [よしなしごと]

新生児に対するK2レメディ投与による死亡事件に関する新聞報道があって、その内容および当事者性を持つホメオパシー団体であるところのホメオパシー・ジャパンの反応についてはmochimasaさんのホメオパシーについての読売と朝日の詳報とホメオパシージャパンの反応と云うエントリで手際よくまとめられている(ちなみに朝日の記事についてはキャプチャがある。とりあえずそのキャプチャのはてブにリンク)。
で、ここでこの報道に対する当事者以外となる団体、あるいは個々のホメオパスの反応とかないのかな、とかちょっと見てみた。当然ながらあんまりない。言及してもあんまりいいことないもんね。

ホメオパシー・ジャパン系ではないホメオパシー団体「ホメオパシー友の会」は、その公式ブログで7/31付 朝日新聞記事 『問われる真偽 ホメオパシー療法』を読んでと云うエントリをあげている。
また、今年2月に英国で議会委員会がホメオパシーの効果を否定する意見書を政府に提出し、公的医療から外すよう勧告したことに言及している。

しかし、これに関しては、その後、英政府はホメオパシーを公的医療(NHS)の対象として残すことを決定した(7/27)。”治療法は個々人が選択すべきであり、ホメオパシーは選択肢の一つとして残すべきである”という結論を下している。
このあたりが実情としてどう云うことだったのか、と云う部分は、(毎度ありがたいことに)kumicitさんが英国保健省は下院科学技術委員会報告を無視すると云うエントリで報道の翻訳と解説を行ってくれている。
通常医療と同じ規制のもとにホメオパシーを置くと、ホメオパシーは医療として存続しえないという点は保健省も認めている。ただし、通常医療と同じ規制にして医療からホメオパシーを消すと、ホメオパシーが地下にもぐってしまって、誰も安全性を保証できなくなるので、表に置いておくためにダブスタを続けるという。
なんか少し前のエントリで紹介した、osakaecoさんのホメオパシーへの需要を「合法化」するためにと云うエントリで述べられていることとちょっと通底するような事情がある、みたいな感じかなぁ。

そんでもってホメオパシー友の会は、今回の訴訟から2つほど教訓を得ているらしい。
話は朝日新聞の記事に戻るが、今年5月に山口県で起こった乳児死亡に対する損害賠償請求訴訟についても触れていた。訴えによると、新生児に対して一般に多く使用されているビタミンKの代わりに助産師がホメオパシーのレメディを与え、新生児はビタミンK欠乏性出血症と診断されて、約二ヶ月後に死亡したという。

この事件からは多くを考えさせられるが、一つはホメオパシーを実践する上で、”してもいいこと、してはならないこと”について法律的な知識が必要だということ。
議論を法律的な知識に集約させるのは事情が事情だけにちょっと保身のための事態の矮小化、と云う感じもしなくはないけれど、これがたとえば、負いうる責任範囲の自覚、と云うようなところにつながっていくのだとすれば、たぶん悪いことじゃないんだろう、とも感じる。
また、記事中の医師の言葉に「現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける」とあるが、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアの”ホメオパスの倫理規定”によると、「患者は適切な治療を受ける権利があり、ホメオパシー以外の療法が適切と思われる場合は、それを推奨しなくてはならない」とある。症状により、また体質により、合う療法と合わない療法がある。ホメオパシーが適切ではないと考えられる場合、現代医学が必要と思われる場合は、そのこと患者に伝えなくてはならないということである。ホメオパスとしての倫理が問われるところだろう。
近日中に会員に「倫理規定」の配布を予定している。その中には、上記の項目も当然含まれている。
これもたぶん、このことそのものはいいことなんだ、と思う。ただその倫理は、個々のホメオパスがどのような基準に基づいて ホメオパシーが適切ではないと考えられる場合、現代医学が必要と思われる場合を判断するのか、そのようなスキルをどうやってすべてのホメオパスが一定以上の水準で身につけるのか、不適切な判断が下された場合にどんな方法でどれだけの責任を負うのか、と云う背景に支えられていないと実質的には意味を持たないんじゃないかな、みたいに思ったりもする。

なお、ホメオパシー・ジャパン系のホメオパスとしては、Angel Therapy Homoeopathyと云う屋号で販売代理店もなさっている矢澤 裕子さんと云うかたが言及しているのを読んだ。リンク・引用いっさいお断り、と云うことのようなので内容は触れないけれど(云いたいことだけ好きに云いたい、ってことね)要するに「通常医療でも病気が治るとは限らないんだからおんなじでしょ?」と云うロジックでした。通常医療の従事者が背負っているのと同じだけの責任を負おう、みたいな発想はやっぱりないみたい。
そう云うスタンスは最終的にホメオパシーの将来を閉ざすことになる、と思うんだけどなぁ。
nice!(0)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 6

うさぎ林檎

こんばんは。

医師は医学部で6年間学んで国家資格を取得し、その後2年研修医として臨床経験を積み、ここでやっと医師としての入り口に立ちますよね。
クライアントの症状にホメオパシーが適切であるかどうか、ホメオパシーしか学んでいない人がどうやって判断できるのでしょうね。どうしてそんなことが可能だと思えるのか、私にはやっぱり謎です。医学的知識どころか基本的な生物、化学、物理、法律や哲学(多分もっと)最低限のそれを修めずして何が判断できると思えるのか。

>一つはホメオパシーを実践する上で、”してもいいこと、してはならないこと”について法律的な知識が必要だということ。

詐欺師の言いぐさじゃないんだから法律の話だけじゃなくて、そんなことに今頃気付いたの?とは思うんだけど、それでも全然気付かないよりはマシなんだけど……。
自分は治療だと思っていることを治療と呼ばず、薬だと思っているものを薬と呼ばずに施術するコトへの倫理観が、ごっそり丸ごと抜けていることはどう思うのだろう。私にはそんなに自分に都合よく考えられないです。

何故、自分自身にもっと謙虚になれないのでしょうね。ホメオパスになる動機が陳腐な自分探しの延長線である間、職能と責任が乖離している間、公に耐えうる職種にはならない、ですよ。
by うさぎ林檎 (2010-08-01 20:20) 

pooh

> うさぎ林檎さん

> クライアントの症状にホメオパシーが適切であるかどうか、ホメオパシーしか学んでいない人がどうやって判断できるのでしょうね。

いや、そのあたりを相対化する視点は存在するんです。finalventさんなんかが最近言及しているような視点ですね。レイヤーが違うので、必ずしも不当とは云えない。
ただ、医療をそのレイヤーで語るのが正当なのかどうか。ここも結局「価値判断」と云うことになるので相対化は可能なんです。そうなるとやっぱり、昔飯田泰之さんに(なぜか直接)指摘していただいたみたいに、厚生経済学みたいな角度からの視点を導入せざるを得ない。技術開発者さんが持ち出すような「社会」からのまなざしですね(いやこれ、相手がぼくだから持ち出されるわけですけど)。

> 自分は治療だと思っていることを治療と呼ばず、薬だと思っているものを薬と呼ばずに施術するコトへの倫理観

方便、と云うものを野放しにすると、こう云うことが起きるわけです。

> 公に耐えうる職種にはならない

それでもまぁ、善意を満足させてお金を生むことはできるわけです。
その裏で一例でも、積み上がる死体や裏切られる望みが生まれるのは、正直許容しがたいところではありますけれど。
by pooh (2010-08-01 21:03) 

うさぎ林檎

こんにちは。

引き続きオルガノン読んでます。文中にダイナミック、バイタルフォースこの二つの単語が何回出てくるのか数えてみたくなります、そんな感じです。
私は圧倒的に教養が足りないので正しく解釈できないのですが、オルガノンは医学書というよりは哲学書のように見えます。

オルガノン 29節より
>すべての病気は(ただし外科的な手術が必要なものだけは除く)は、本来、私達
>のバイタルフォース(生命原理)が、感覚と機能において特殊でダイナミックな
>、病的な錯乱状態にあることを示す。

健康な人の”状態の変化”=”病気”で、これを引き起こすのがエネルギーの乱れで、このエネルギー(バイタルフォース)を正常に戻すことがハーネマンの考えた治療………と謂うことのようです(多分…同じようなことが繰り返し繰り返し書いてあって逆に混乱します)。
それは種痘や麻疹の患者が接触せずに離れていても感染することから、何かダイナミックなエネルギーがそこに作用していると考えたことの帰結のようです。
そして治療(バイタルフォースを正常に戻す)の唯一の手段が彼の考えたレメディーということのようです。
(自信がないので、”のようです”が多い)

オルガノン 14節より
>治癒不可能な病的なもの、目に見えずに人間の内部で病的に変化する治療不可
>能なものが、もし仮にあるとすれば、そういうものは、病気の兆候と症状を通
>じて厳密に観察する医師に知らされることはないだろう。このことは、人間の
>生命をつかさどる全能なる神の無限なる善に完全に一致する。

ハーネマンの思想にはキリスト教が通底していると思います。
なんか不思議なんですけど、ホメオパシーの勉強した人って本当にオリジナルのオルガノンを読んでいるんでしょうか?
カルマなんて異教徒の発想ですよね、ハーネマンが知ったら卒倒すると思うんですケド、この間見た由井寅子総裁の写真はセミナーの時に合掌してたし…。
もっとも今読んでいるまでの部分では”カルマ”も”好転反応”も出て来ていません。
もうちょっと読んで見ます(頑張れアタシ)。
by うさぎ林檎 (2010-08-04 13:50) 

pooh

> うさぎ林檎さん

> 引き続きオルガノン読んでます。

おつかれさまです。

> それは種痘や麻疹の患者が接触せずに離れていても感染することから、何かダイナミックなエネルギーがそこに作用していると考えたことの帰結のようです。

このへんがニセ科学で広範に用いられる「波動」と云う発想のひとつのベース、と云うことなんでしょうね。

> ハーネマンの思想にはキリスト教が通底していると思います。

これは時代背景を考えると自然なことでしょうね。

> カルマなんて異教徒の発想ですよね、ハーネマンが知ったら卒倒すると思うんですケド

このあたりはたぶん「マヤズム」って概念が関係してくるんだと思います(これってなにを読んでもよく理解できないんですけど、たぶんそのへんがミソのような)。で、確かにこの概念はキリスト教的ではないですよね。とか思ってちょっと見てみたら、NATROM先生がちょっと書いてました。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080908

どうもこれ、「オルガノン」にはまだ出てこない考え方のようで、でもって発想の萌芽はたしかにハーネマンにあるようなんですけど、彼の没後に整備された概念のようです。なんだかなぁ。
by pooh (2010-08-04 22:37) 

ホメジャ嫌い

日本ホメオパシー医学協会のホームページで、ホメオパシーをやっている病院、助産院が紹介されていますが、名前、住所、電話番号、一部顔写真つきで公開されてます。山口の事件の当事者の写真も載っているようですが、協会は助産師を守る気がないんでしょうか。
by ホメジャ嫌い (2010-08-31 00:12) 

pooh

> ホメジャ嫌いさん

いらっしゃいませ。

それらの公開を差し止めることが関係者を守ることになるのかと云うと、そこはまた違うのではないか、と思います(団体側が現状をどう理解しているか、と云う部分で変わってくるかと思います)。
ただ、今回いちおう日本助産師会が提示した方針と、団体のスタンスとはギャップがあるわけで、なので今後個々の(ホメオパシーに関わりのある)助産師さんたちがどうするのだろう、と云うのはあると思いますが。
by pooh (2010-08-31 07:43) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

関連記事ほか

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。