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優劣、ではなく [よしなしごと]

「庶民派」でいらっしゃるらしい民主党の参議院議員、山根隆治氏がご自分のブログに転載されているメールマガジンの4月15日号を読んだ。

なんかこう、このへんには恥ずかしながら疎いので気づくまで時間がかかったけど、このひとって例の長妻厚生大臣の参議院予算委員会におけるホメオパシー言及の原因になった質問をしたひとだったんですね(このへんの経緯はMochimasaさんが長妻厚労相がホメオパシーに言及した件でよくまとめられている。ついでにはてなブックマークでの反響にもリンク)。
 2ッは、健康ではないか。肉体的、精神的健康を保つのには、西洋医学中心の医療から世界各国にある伝統医療を西洋医学と融合させた統合医療の推進が必要であると主張させて頂いた。統合医療の導入は、治療医学 から予防医学に大きく舵を切ることを意味し、心のケア、癒しをも包含する医療の到来である。
(改行タグをはずして整形しています)

こう云うロジックは代替医療をなりわいとするひとたちの口からはけっこうな頻度ででてくるように思うけれど、西洋医学(≒通常医療)=治療医学統合医療予防医学と云う二分法的理解を前提に置かないと、この一文はなりたたない。
じっさいのところはどうかと云うと、ぼくは内科医のNATROM先生が標準医療は治療中心で、代替医療は予防中心という誤解と云うエントリでお書きのあたりが実情だろうと思う。じっさいには通常医療においても予防は重要な割合を占めているし、重篤な状況にある患者に即効性をうたいながらアプローチする代替医療もそれほどめずらしくない(がん患者に対して画期的な治療法を提示する代替医療なんか、典型的にみんなそれ)。

と云うか、予防と治療はどちらが優れているか、みたいな議論はそもそも成立しないのであって、患者のその場の状況によって必要とされるものは違ってくるわけで。心のケア癒しが無用のものとはまったく思わないけれど(事実病状にも影響するし)いま目の前で危険な状態にある患者に予防を講じてもしかたがないわけで、要は検証に基づくリソースの配分の判断の問題なんじゃないか。
で、その当のリソースは、作用機序的にも疫学的にも効果の否定されている代替医療の検証に費やしてもいいほど潤沢じゃない、と云うのが現況なんじゃないか、と思う。
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技術開発者

こんにちは、poohさん。

>西洋医学(≒通常医療)=治療医学、統合医療=予防医学と云う二分法的理解を前提に置かないと、この一文はなりたたない。

労働衛生の問題とかを扱っているとね、なんていうか現代の医療を治療医学と決めつけているのは実は患者自身の面がある感じをうけるんですね。定期検診で「血圧が高い」とか「血糖値が高い」とか言われて、医療機関の方は生活習慣改善のプログラムを用意して「さあ、いつでもご相談に応じますよ」と待っているのに行かないでいて、実際、何か問題が生じてから「治してくれ」と行き始める(笑)。

なんていうかな、例えばタバコを止めるなら、気力と根性だけでがんばったりするより医療機関の断煙プログラムに頼る方がはるかに楽です(私は止めないけど:笑)。健康が懸念される肥満をダイエットするにしても、馬鹿なダイエット食品に頼るよりも医師と相談しながらきちんと経過観察しつつダイエットした方がはるかに安全で効果的なんですね。

なんていうか、既に現代医療は予防についてもかなり大きな力を持っているわけですが、それを無視しているのは他でもない消費者自身のような気がしてしかたないんですよ。

by 技術開発者 (2010-04-20 08:55) 

pooh

> 技術開発者さん

> 現代の医療を治療医学と決めつけているのは実は患者自身の面がある

まぁぼくたちが暮らしているなかで医療について考えるのは、通常は体調が悪いとか検査にひっかかったとか、なにかしら目の前に問題が示されてその解決が必要、みたいな状況なので、「ともかく対処してくれる存在」として認識しがちなのは当然ではあるんでしょうけどね。

> > 現代医療は予防についてもかなり大きな力を持っているわけですが、それを無視しているのは他でもない消費者自身

ここのところ、ちょっとややこしくて。と云うのは、ぼくたちは日常生活のなかで医療機関をそう云うやりかたで活用するものだと思っていないし、医療機関側もあまりそう云う利用方法を奨励していない(ように思える。ここにはリソース配分の問題もかかわってきそうです)。あと、特定の状況下で広範囲に実施されるべき予防施策(インフルエンザ時のうがいと手洗いとか)を奨励するのが、社会においてだれの役割なのか、と云う部分の議論もたぶんでてきます。たしかちがやまるさんから、そう云う部分は共同体の役回りだ、と云うご意見をいただいていたような。

病気に対峙するにあたって、予防に目を向ける趨勢が生じているとすれば、そのこと自体はけして問題になるようなことではない、と思うんです。そこには通常医療を提供する側のスタンスの問題がひょっとするとあるのかもしれないし、そこは考えるべきなのかも、とも思います。
by pooh (2010-04-20 22:16) 

ちがやまる

「予防」は現代の医学(注・技術開発者さんが言われる「現代医療」という言葉にたぶん相当しますが、「治療」を考えていないところまで「医療」という言葉で包もうとしない方がいいと思います)が持つに至った概念ですが、これは「医療機関」が提供するものではないですね。「1次」「2次」「3次」と分けられるうち、健康診断で異常を発見しようとするのはすでに「2次予防」です。
労働衛生の中にも、「健康管理」というのがありますが、実はそれはどちらかというと付け足し的なもので、労働の場で事故や健康障害が起きないように環境や作業を管理しましょうというのがそれより先に来ます。

「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手」(医療法)は「予防」がそういうものである事を必修事項として習ってきています。小中学校などでも保健科、家庭科、社会科などで扱っていていいはずだと思いますけど、昨今は置き去りにされているのでしょうか。

そういう事が前提としてあるので、「健康を保つための医療」という言葉・考え方をまじめに出してくる人たちが可笑しいのです。税金使って政策を検討している人たちがそんなレベルなのは嘲笑していてすむ話ではなさそうですけれど。
by ちがやまる (2010-04-21 06:35) 

pooh

> ちがやまるさん

この部分、「医療」と云うものに対する把握と、それに基づく運用、と云う話になってくるんだと思います。で、それは「なにが求められているか」と云う部分から、社会的に規定されてくる部分なのではないかと。
現在の医療機関が現制度のままでそのミッションに(養生訓的な意味での)予防までを含める、と云うのは当然ながら非現実的で。ただ、その部分が求められているのなら、それは通常医療の延長上にある、効果が一定水準期待できるものであることが望ましい、と云うのも、またあって。繰り返しになりますが、結局は社会的リソースの配分に対する判断、と云うことになるのかと思います。

> 「健康を保つための医療」という言葉・考え方をまじめに出してくる人たちが可笑しい

ただ、前提は変わりうる、と云う話でもあると思うんですよね。
by pooh (2010-04-21 07:42) 

ちがやまる

費用の配分において、健康で活動できる期間×人数をふやすことで「医療」というものの出番を押さえようというのが正当な進み方ではないかと思います。「社会的健康」をどう定義するかは難しいかもしれませんが、病気かどうかの界面を考えるのは、需給曲面を考えるのに似た扱いやすさがあるのではないでしょうか。人間は生物としての共通性を持っているために、栄養摂取量の目安なんていうものを提示することもできるわけですし。

前提は変わり「うる」という場合、具体的に何を思い浮かべておられて、それがどの程度変わることを想定しておられるのか、少なくとも1例くらいは挙げてみてくださらないと、理解がついていきません。
by ちがやまる (2010-04-21 16:05) 

pooh

> ちがやまるさん

ごめんなさい。ぼくが言葉足らずです。あと用語の混乱もあって、わかりづらくなってます。
おっしゃるように「治療」を考えていないところまで「医療」と云う用語でくくる(そしてそのままそれを即座に医療従事者の領域に属するもののように扱う)のは乱暴かもしれませんね。「医学」かな。これも問題ありそう。

混合医療、と云うか「統合医療」を主張する代替医療側のロジックに、「医療」は「治療」しか考えていない、不完全だから通常医療と代替医療を統合すべき、と云うのが典型的にあるわけじゃないですか。でも「医学」としての通常医療の知見に、「治療」以外のスコープがないわけじゃもちろんなくて。原則的に通常医療の知見にもとづくもの(これは通常医療のメソッドによって有効性を確認された代替医療も含みます)に、「治療」以外の領域でももっとも信頼すべき方法があるはずで。

そこでまぁ、じゃあそこで通常医療の領域において、だれが「治療」以外の部分を担うんだ、と云う話になるんだろうな、と。やっぱりホメオパスより通常医療従事者のほうが適切ですよね。でもそこでただ「やってください」と云ってもはじまらない(リソースの追加が必要になる)。
前提の変化、と云うのは、こう云う「通常医療従事者に求められる社会的な役割の変化」です。より予防に対する対応を手厚くしてほしい、リソースをこれだけ追加するから、みたいな要請が社会の側からあれば、通常医療従事者の役割が「治療」からシフトするのもおかしなことじゃないし、少なくとも現状タイムもティンブクトゥも同居したままにみえる代替医療よりも望ましいことなんじゃないかな、と云うことでした。
by pooh (2010-04-21 21:28) 

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