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甘え [よしなしごと]

矢吹さんの結論としては「どらねこ日誌: 早寝早起き朝ごはん」を、みな読むあるよろし、ということですねと云うエントリを読んだ。

最初にとりあげられているWired Visionに掲載された矢部孝教授のインタビュー(例のマグネシウム文明のやつ)については、そこで掲げられているブレイクスルーがあまりにも巨大なスケールである、と云うだけでなんとなく疑わしく感じていたのだけれど、正直その疑念と云うのはぼくのなかにある保守性に起因するだけのものでしかなくて、ぼく自身のなかにはこのインタビューの内容を信用するだけの根拠も、否定するだけの根拠もない(ただ、ここまで言い切っちゃって進捗が予定どおり進まなかったりしたら、常温核融合と同じように陰謀論が登場するんだろうなぁ、みたいに思ったりはする)。このインタビューの反論として出されたDr-Setonさんのエントリに書かれている内容のほうが納得がいくのだけど、それにしてもぼくがそう判断するにあたってのなにかしらの客観的な根拠があるわけではない。
そして、正直云ってこれをちゃんと判断できるだけの情報を集めるのは、ぼくには不可能だ。時間の問題もあるし、(個人的にはより深刻な)知的能力の問題もある。そして、同種の問題はつねに、ニセ科学の蔓延にまつわる諸状況に横たわっている。
ニセ科学、「と」の類に騙されたくなければ、自ら健さんを積め、おっと健さんなんぞ積んでどうする(^_^;、えっと研鑽を積め、調べろ、というのは、理論的には正論なんだろうけれど、僕らそれなりに多忙なパンピーにとって状況論的に通用しない。俗世とは少しばかり離れたところで、それぞれにご専門の研鑽に励む状況を社会が許しているのは、やがてその研鑽が素人衆生になにがしか還元されるところがあるからだろう。
この見解にぼくは賛同する。するのだけど、ただそう云うスタンスが(エントリ後段で矢吹さんご自身もお書きのとおり、そして以前あらきけいすけさんに指摘されたように)ある種教えてクンの甘えたおねだりでもある、と云う部分も確かにある。あと、この種のことがらに対して「わかりやすい」説明を求めることの危うさについても承知しているつもり。

でも、こう云う部分での専門家による貢献を求めること自体が、それほどの高望みなのかなぁ。そうだ、と云われるとどう反論したらいいのかわからないけれど。
タグ:ニセ科学
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技術開発者

こんにちは、poohさん。

>でも、こう云う部分での専門家による貢献を求めること自体が、それほどの高望みなのかなぁ。

ニセ科学批判を始めたばかりの頃に言っていたたとえ話の一つに、「火事場の長いハシコ゜」なんてのがあります。長いハシゴをもって火事場に通りかかったら2階の窓から人が助けを呼んでいる。そりゃあ、ハシゴをかけてあげなきゃ不人情です。でも、ハシゴをかけたら、「登ってきて、連れて降りてくれ」となったら、勘弁してくれとなる。なんてね(笑)。

最初の頃、「その話は科学的におかしいよ」と言うだけでは満足して貰えずに、「科学的に正しくないと言うことを徹底的に証明してみせろ」みたいな言われ方をするのに面食らってつくった、たとえ話なんですけどね。みんなが「ハシゴを持っているなら、かけるだけじゃなくて登って連れて降りろ」と言うなら、ハシゴを持っていても隠して逃げてしまうよ、なんて言っていた。

という意味でハシゴを掛けるだけの意味で言うなら「科学者の夢」と思っていれば良いのじゃないかな。なんとなく牽強付会な夢とも言えなくは無いけどね(笑)。

by 技術開発者 (2009-07-09 09:10) 

pooh

> 技術開発者さん

> 「登ってきて、連れて降りてくれ」となったら、勘弁してくれとなる。

わかります。

結局これって意識のすり合わせと云うか歩み寄りと云うか、そう云う話なのかなぁ、とかも思ったり。

ひたすらわかりやすい説明を求めるような態度、素人の「おれにわかるまで噛み砕け」的なスタンスの危うさは、同じ受け手側としてだいぶ昔からしつこく問題にしていて。ここでは繰り返しませんが、それは自らだまされに行くようなものなので。

でも、ここでアカデミズムと云うものを考えると、はしごをかけてやる準備をしておく、と云うのをどう捉えるか、と云うのはいまのご時勢けっこう切実な話だとも思うんです。アカデミズムが社会のリソース配分のなかでどんなふうに捉えられているか、象牙の塔はいつまでも安泰なのか、と云う部分で。これは一面おそらくapjさん的なニセ科学問題の把握に近接する部分のある捉え方なんではないかと思うんですけど、ニセ科学を排除する営為を他人事としたままで、はたしてアカデミズムを維持できるだけのリソースが今後社会からまわしてもらえるのか、みたいな意味で。

ぼくはだいぶ前に、こう云う部分できくちさんにかみついたことがありました。充分だと思ってる? みたいな感じで。これって勝手に彼にアカデミシャンを代表させた物言いで、その意味では(実際の彼の行動からするととりわけ)非常に不公平ないいがかりです。でも、きくちさんやapjさん、たざきさんやさまきさんそのほかのニセ科学の問題に意識的なアカデミシャンの方々を除いた、学術にたずさわるひとたちの意識がどのあたりにあるんだろう、と云うのはじつはいまもちょっと問題にしたかったり。
by pooh (2009-07-09 22:03) 

技術開発者

こんにちは、poohさん。

>アカデミズムが社会のリソース配分のなかでどんなふうに捉えられているか、象牙の塔はいつまでも安泰なのか、と云う部分で。

なんていうかな、世間一般の概念としての「象牙の塔」というのは、「学者が自分たちで閉じこもっている塔」という見方なんだろうと思うんですね。私は、その見方を変えてみて「社会が邪魔だから学者を追い込んでおく塔」という部分を指摘して見たかったのね(笑)。それを、おとぎ話にしたのが「ガンコ村とオッチョコチョイ宿」ね。

私は、百人以上の研究者が研究をする建物の設計にたずさわった事があるんだけど、本気で「こいつら、普通の社会にいたら邪魔にされる」と感じましたよ(笑)。別に特定のテーマ以外では普通の奴らなんだけどね。ことに自分の研究になると、まあガンコだこと。その研究をするための実験室を設計する訳だから大変だよね。大学の営繕の人から「先生方の要求なんて聞いちゃ駄目ですよ、建物が四角になりませんよ」なんて言われたのね。私のことだから「それはできない」っていろんな要求を踏みつぶして、とりあえず四角にはしたけどね(笑)。

こんなたとえ話で良いのかどうか分からないけど、忘年会の店を決めるのに、「肉料理か、魚料理か」ととりあえず幹事が聞いて8:2だったりして肉料理に決まり始めたときに「いや、魚も捨てがたい、両方選べる店はないものか」なんて言い出す奴みたいな感じかな、肉だ魚だと言っている方も「どちらかといえば」程度でどっちに決まってもかまいはしないと思っている中で、幹事に「両方満たす店を探せないか」と言い出す奴が居ると、幹事にしてみると「邪魔な奴」だし、みんなも「そんなに、こだわるなよ」とちょっと邪魔だったりするでしょ(笑)。

そんな「ちょっと邪魔」な奴らを「お仲間がいるから、そこでこだわってな」と追い込む先が「象牙の塔」だったんじゃないか?なんてのが私が提唱している視点ね(笑)。そうして追い込んでおくと、時に「良いこと」も見つけ出してくれるから、まあ社会に置いておく価値があるといったものね。

そういう「邪魔な奴」を追い込む先といての象牙の塔を解体するということは、当然だけど社会に邪魔な奴を野放しにするということで、社会はそれに堪えなくてはならないと言うことなのね。その邪魔に堪えるコストは、たぶん象牙の塔を維持するコストよりも高いと思うけど、それが社会が選択した事なら仕方ないかなと思っている。

by 技術開発者 (2009-07-10 08:25) 

pooh

> 技術開発者さん

うむむむ。象牙の塔はロンドン塔ですか。

> その邪魔に堪えるコストは、たぶん象牙の塔を維持するコストよりも高い

これですねぇ。
ちゃんとそこまで考えて評価するシステムが、いまの「社会」で機能しているのか、と云うところもあるような。ぼくも、おっしゃることは筋道としてはわかるんですけど、実感できる部分はちょっと薄い。

ひょっとするとこの「実感できる部分が薄い」みたいなところが、ぼくのエントリの本論ともつながってくるのかも。
これって技術開発者さんの「健全な保守性」論とも関連してくるようにも思うんですけど、そう云う経験値の蓄積に基づく部分って、あんまり短期的な視点では生かせないじゃないですか。それこそ「わかりやすく」ないし。ただ現実どうなのか、みたいなところについては、やっぱりできるだけ白日の下にさらして、両側から考えていく、みたいな方法しかないのかも。
by pooh (2009-07-10 22:17) 

TAKA

>あらきけいすけさんの、教えてクン発言

あらきけいすけさんの真意は、「とにかく素人は、専門家に従いなさい。文句を言わず、ありがたく私の話を聞きなさい。」という感じと、推測しました。
「分からない事があっても、質問してはいけません。専門家は忙しいのです。自力で解決しなさい。他人を頼る子は、成長しません。」という事だったのかも、知れませんね。

ちなみに私の場合、「素朴な疑問を繰り出す素人に対し、頭から馬鹿にして見下す専門家」のご高説など、もちろん喜んで拝聴する次第です。
・・・・・・・・
ロンドン塔と言えば、次のような文章が、監獄の壁に書かれていたそうな。「生きていることは、死ぬよりも地獄だ。」
暗く狭い場所で死を望む人の気持ちなど、お気楽に自由を謳歌している私には、これっぽっちも分かりませんねえ。(-_-;ウ~ム。
by TAKA (2009-07-11 16:41) 

pooh

> TAKAさん

いや、お話を聞かせていただけるんなら、それはありがたいことなんですよ。ただ、そうやって聞かせてもらえるお話が、そのまま理解できるかと云うと難しい(こちらが専門家ではないことを前提におくと)。
そうした場合に、なにをどこまで求めることができるのか、と云う話ですね。もちろん非専門家としても「わかるまで説明しろ」じゃだめなわけです。
by pooh (2009-07-12 05:39) 

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