科学、非科学 [世間]
buyobuyoさんの機序が明らかではないことを全部拒否したら生活できませんよ?と云うエントリを読んだ。まぁ基本線としては同意、と云うか、ここでぼくが(とくに医療に関して)考えて来たことに近い気がする。
この辺の話はとりわけ、医療に関して云える話で、buyobuyoさんもその辺りを念頭にお書きのように見受けられる。どこで書いたのか忘れたけれど(多分NATROM先生かmedtoolzさんの見解に触発されたのだと思う)、医療は基本的に待ったなしで有効と判断される行為は躊躇なくなされる必要はあるけれど、その行為を正当なこととして位置づけるためには科学的な理解と根拠は必要になる、みたいな部分はあると思う。
機序がわからなくてその現象のメカニズムに関しての理論がはっきりしていない現象でも、科学的に利用できてしまうのである。とは云えその
はっきりしていない部分について、「はっきりしてないけど使えるからいいんだよ」としておくのもまたあまり科学的な態度とも云い難いわけで。この辺、感覚的な問題としてはここのコメント欄で技術開発者さんがおっしゃっていたようなことと繋がるようにも思えるし、なんとなくこことここで書いたこととも繋がってくるような。
この辺の話はとりわけ、医療に関して云える話で、buyobuyoさんもその辺りを念頭にお書きのように見受けられる。どこで書いたのか忘れたけれど(多分NATROM先生かmedtoolzさんの見解に触発されたのだと思う)、医療は基本的に待ったなしで有効と判断される行為は躊躇なくなされる必要はあるけれど、その行為を正当なこととして位置づけるためには科学的な理解と根拠は必要になる、みたいな部分はあると思う。
疑似科学を批判する人の中で、時々、疑似科学側の作用機序が明らかでないことを問題の核心みたいに言う人がいるんだけど、それは非常に筋が悪い。この意味でけっこう大槻教授については、なんと云うか、困ったもんだみたいな捉え方がされることはけっこうあって、まぁそれはそれとして実際にニセ科学問題に継続的にコミットしている論者に
作用機序が明らかでないことを問題の核心みたいに言う人はあまりいない気がする。それってなんと云うか、自ら議論を隘路に向けて突進させるような議論の方法のような気がするし。
タグ:自然科学
今晩は。
あれですね。「メカニズム論の誤謬(byきくちさん)」。血液型性格判断の議論でよく見られます。
疫学であったり、心理学的な研究であったりに目を向けると、メカニズムが解明されていないから云々という言い方は、なかなか出来なくなります。
メカニズムが明らかで無くても、研究は出来るのですよね。そのように科学は洗練されてきた訳ですしね。統計的方法等を取り入れて。
by TAKESAN (2008-07-27 19:48)
> TAKESANさん
> 疫学であったり、心理学的な研究であったり
まさにそう云うお話だと思います。
機序の解明を希求するのは科学的態度の発露であって。でも、必ずしもそこへ向かうことのみが「科学的」と云うことではない、と云うことですよね。
by pooh (2008-07-27 19:57)
こんにちは、 pooh さん。
>疑似科学を批判する人の中で、時々、疑似科学側の作用機序が明らかでないことを問題の核心みたいに言う人がいるんだけど、それは非常に筋が悪い。
少し逆のマイナス作用に関して考察して見たとき機序の重要性が見えてくるのかも知れません。例えば、buyobuyoさんがあるレストランで食事したら、その次の日レストランの他の客が皆発熱・嘔吐などの症状を出したとしましょう。その次の日、buyobuyoさんが誰かのコンサートに出かけたら、やはりそこでも次の日に同じ症状が現れたとします。伝染病などが疑われて、buyobuyoさんも精密検査を受けたのだけど、少なくとも既知の病源体による感染はかくにんできなかったとしましょう。すなわち、buyobuyoさんの行く先々で発症が起こった事にかんしてその発症機序は不明な訳ですね。
しかし、buyobuyoさんは「機序が明らかでないことをもって関係否定はするべきでは無い」というお考えですから、当然のこととして、発症した人たちの治療費は全て自分がかぶられるのでしょう(笑)。死人が出たら「過失致死」に問われる可能性もまた受け入れられるのではないかと思います(笑)。
というのは、まあ冗談ですが、「機序の明確化」というのが求められるのは、多くの場合「利得のある相関」よりも「損失のある相関」の方が厳しく求められたりするわけですね。私は「利得型のプラセボ効果で利益を得るなら、損失型のプラセボ効果に対しては賠償を行うべきである」なんて理屈をこねる訳です。つまり、「『気分スッキリ』のマイナスイオン空気清浄機を導入してから気分が落ちこむことが多くなり、ついには鬱病と診断され、会社を辞めるにいたった。マイナスイオン空気清浄機の副作用が原因と思われるから、2000万円の損害賠償を求める」なんて話の時に、当然、機序が不明だから払わなくて良いと言うことにはならない訳です。
by 技術開発者 (2008-07-28 08:27)
医療を科学的な態度の例として出しちゃいけません。
もちろん医学研究において科学的態度は重要ですが、医療においては研究のみならず現場があります。
最終的には全ての医療技術が科学的に裏づけされることが理想なのでしょうが、現場では「今」必要な科学的に裏づけの無い技術というものもあります(後から「あれは間違いでした」って言うのも結構ありますが、だからといって立ち止まってはいられないし)。
偽科学は通常このような医療技術とは逆のアプローチを取っています。まず技術(結果)があって、後から理論が生まれるのではなく、技術(結果)の伴わないものに科学っぽい説明を付けて「自分たちは正しいんだ」って言っているだけです。
by Noe (2008-07-28 08:43)
トラックバックありがとうございます。機序が不明であることはそのことがニセ科学であることの必要条件じゃないですからね。結果はないのに機序はそれっぽい説明があるニセ科学もありますから。
>技術開発者さん
そういうことが起こったら、まず私に対して警察が何らかのアクションを行うことが合理的っぽいですが(笑
by buyobuyo (2008-07-28 09:39)
こんにちは、buyobuyoさん。
>そういうことが起こったら、まず私に対して警察が何らかのアクションを行うことが合理的っぽいですが(笑
まあ、あくまで「機序が明確でない」という事に関して、本来なら作用機序が明確である場合以上に、変な作用が起こらないという確認が必要になるという事を言いたかったんですね。そういう意味では、「機序が不明であることはそのことがニセ科学であることの必要条件じゃない」という事は私も認めるのですが、こと医療系あるいは健康系の「作用機序不明確」に関しては、嫌になるほどの「副作用は無い、あるいは事程度でありたいしたことはない」の確認が必要になると思うわけです。
作用機序が明確である場合、その作用機序から派生する負の効果をまず確認すれば、或る程度の範囲の副作用は押さえ込める訳です。ところが作用機序が不明確であると、「マイナスイオンで気分スッキリ」に対して、「気分に作用するなら、俺の気分が落ちこんだのもマイナスイオンの副作用ではないか」に対して「それは副作用ではない」を証明するのは極端に難しくなる訳です。
by 技術開発者 (2008-07-28 11:35)
> Noeさん
その意味で、ぼくは以前いったん、「医療に求められているのは必ずしも科学ではない」と云う自分なりの結論を出しています(そこに落ち着くまでに相当迷走して、いろんなかたからの示唆をどっさりいただきました)。ただもちろん、医学が責任を負う(と云うか、責任の範囲を規定する)ためには、科学の裏付けと云うのは必要なものでもあって。
医学はつねに待ったなし、結果優先です。従っておっしゃる通り、結果に対する責任を負っていない(責任範囲を自ら規定しようとしない)代替医療は、姿勢としてはニセ科学ですよね。
by pooh (2008-07-28 22:04)
> buyobuyoさん
いらっしゃいませ。
上のNoeさんへのお返事に書いたように、その部分についてはまず「医療は単純に科学として論じられない」と云うのがぼくの現時点での見解です。もちろん、機序が明らかである、と云うのが科学的だと云うことの条件だと云うことにはならない、と云う点には同意します。
なので、言及させていただいたエントリの内容には同意なんですが、その根拠を医学に求めるのは微妙かな、とかは思ったりするんですよ。
by pooh (2008-07-28 22:09)
> 技術開発者さん
医療で云うところのエビデンスと云うものが、ストレートに科学的な意味合いを持っているものなのかどうか、と云うことについては、じつは少し考えてみるべきなのかも知れないんですけどね。
ただ、おっしゃる「損失のある相関」によって引き起こされ得る事態を回避する、と云うだけでも、医療が科学的になされるべきだ、と云う充分な根拠にはなり得ると思うし、たとえどれだけもっともらしい作用機序が示されていても、そこに責任を負おうとすることのない代替医療は基本的にニセ科学だと思います。
by pooh (2008-07-28 22:16)
このへん関係ありそうでなさそうで、ってエントリがmedtoolzさんのところであがってました。関連する内容ではあると思うのでちょっとリンク。
http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/archives/87
by pooh (2008-07-28 22:20)