誰のために [世間]
山形大学の城戸淳二教授のトンデモ本と云うエントリを読んだ。
トマトも牛乳もニワトリのたまごも
クラシック音楽の持つ
リズムが「ふるえ」となって、心地よいしげきを
あたえるのが大へん身の理由と言われているよ。
とまで説明してある。
こんな「エセ科学」を平気で子供に教える教材って有りえへんやろ。
小さな文字で注意書きしても、正当に判断できない親なら親自体もこの話を信じるに違いない。
城戸先生、この記事は、そう云うことを自分の子供たちに信じさせたいおとなのために掲載されたものだと思います。
エセ科学に関しては、「水にやさしい言葉を語りかけると氷になったときにきれいな結晶になり、罵詈雑言を浴びせると汚い結晶になる」有名な話があって、社会的な問題にまでなっているのに、この出版社はどういうつもりなのか。
以前こちらで触れた鹿野司さんのオカルトは大人の心の平安のためにあると云うエントリにあるように、出版社はこどもを持つ親御さんたちのニーズに応えて、このような記事を掲載しているのだと思います。ベネッセにお金を払ってくれるのは親御さんなので、ベネッセが考えるべきなのは細心の注意を払って教育雑誌にふさわしい正確な情報を提供することではなく、親御さんたちに都合のいい記事を掲載することです。
そしていま、多くの親御さん(そして教師)は、例えば「こどもたちの言葉遣いが綺麗になりさえすれば、『水からの伝言』が科学的事実であろうとなかろうと関係ない」と考えています。この記事は、そう云う親御さんたち、教師たちのニーズを満たすものです。
とにかく、ウチの娘には、証拠のないもの、証明できないものは鵜呑みにするな、と教えてある。
そのような家庭(あるいは教室)は、少数派になりつつあるのかもしれません。
だから、子供向けの教材は、細心の注意を払って監修して欲しい、と思うきょうこの頃なのである。
望むらくは思う
だけではなく、科学教育に携わる著名な科学者のおひとりとして問題意識を持っていただいて、その旨を積極的に発信していただければうれしいなぁ、と思います。
って、こんなところで書いていても届かないよなぁ。
こんにちは、pooh さん。少し雑感的な事を書かせてください。
以前、高校の世界史未履修の話の時に「世界史なんて入試に関係しないから」と勉強せずに他の入試勉強をした若者が、おかげで名の通った大学に入り、大きな商社に入社し、若くしてアラブに商談に行き、そこで十字軍が何かも知らないものだから、アラブの王族の機嫌を損ねて商談に失敗しそれが元で失業するなんて馬鹿な話をこさえた事があります。
なんていうか、大人が今目の前に良かれと思ってやっていることが、子供の将来について真に良いことかどうか分からない面があることを言いたかった訳ですね。
まあ、自分でも「馬鹿な話をこさえたな」と思っている面が有ったわけですが、最近、学研が中国の会社に地球儀の製造を発注し、中国政府から「台湾は台湾島として中国の一部としないと輸出を許可しない」と言われて従い、販売したら台湾からのクレームで結局販売中止にしたなんてニュースをみました。なんていうか、学研の担当者が世界史をきちんと履修したかどうかは知りませんが、中国と台湾の長く厳しい対立関係に対してあまり深くは知らなかったのだろうななんて思います。
そんなことを考えていたら、「テレサテンはスパイだった」なんて話が昔流行ったことを思い出しました。それを口にしていた人たちは、台湾にいる外省人、つまり中国本土の革命で台湾に逃げざるを得なかった人たちの気持ちなんてのは、たぶん、全く理解出来ないのだろうな、というか、そういう歴史すら理解の外なんだろうな、なんて思ったことも思い出しました。
なんか、すごく雑駁な事ばかり書いて居ますが、世界史の中の現代史なんてのは、多くの大人が「変にややこしいことを教えて子供が偏向しても」とあまりきちんと教えていない訳です。でもその配慮が、現代の国際社会を生きて行かなくてはならない子供にとって「とてつもなく大きな落とし穴」を親の手で掘っている事につながるのではないかなんて思ったりするんです。
by 技術開発者 (2008-01-22 08:47)
> ベネッセが考えるべきなのは細心の注意を払って教育雑誌にふさわしい正確な情報を提供することではなく
本音はどうであれ、建前としては「よい教育のお供に」なので、ベネッセに抗議を送るというアクションはとった方がよさそうですね。
by newKamer (2008-01-22 09:51)
> 技術開発者さん
なんかですね。この世に「知らなくてもいいこと」って云うのは特にない気がするんですよ。考えなくてもいいこと、ってのもなくて。で、そう云う話をするとこの世にあることで「関係ねぇ」こと、ってのもないんじゃないかな、って。もちろんひとりの人間が何にでも手が回るわけじゃないんですが、基本的には。
段階を踏んで教える、と云うことはあるでしょうけど、でも「知らせるリスク」は犯すべき部分はあるんでしょう。
by pooh (2008-01-22 21:29)
> newKamerさん
城戸さんが本当にそう云うアクションに出れば、インパクトも大きいでしょうけど。
一般人が直接抗議を送っても、「よい教育と云うものに対する解釈の幅」と云う議論に押し込められて終わりそうな気が。
by pooh (2008-01-22 21:31)
>リズムが「ふるえ」となって、心地よいしげきをあたえるのが大へん身の理由と言われているよ。
「どこの誰がいつその様な事実を確認したの。」という疑問はさて置きまして。ビニールハウス内で、農作業する人の好きな音楽を流すと、作業自体の効率は上がりそうな気がします。人間の魂が振るえるという理屈です。ただしやりすぎには注意です。乗り乗りで畑をウロウロしていると、近所の人に不審に思われます(^^;。
poohさん
>望むらくは思うだけではなく、科学教育に携わる著名な科学者のおひとりとして問題意識を持っていただいて、その旨を積極的に発信していただければうれしいなぁ、と思います。
>こんなところで書いていても届かないよなぁ。
今の所、出版社に抗議はしそうに無いですが、城戸先生はご自身のブログで違和感を表明されていますし、poohさんがこれからも城戸先生のブログに言及しつづければ、そのうち本腰を入れてニセ科学批判をし始めるかもしれませんね。その際の城戸先生の芸風は、大槻教授と違って「あっさり切り捨てる」物になる予感がします。城戸先生の、「一言ツッコミ」を見ただけでの印象です(^^。
と思ったら「テレビの影響」の項目では、丁寧な口調で指摘していました。これからは城戸先生のブログは要チェックです^^)。
by TAKA (2008-01-24 00:43)
今晩は。
城戸さんのブログの、「テレビの影響」、読みました。
最高。
ちょっと感動しましたよ。
by TAKESAN (2008-01-24 02:32)
> TAKAさん
トラックバックを切っていらっしゃるのが残念です。こんなことを云っている奴がいる、と云うのを直接届ける方法がない。
音楽が働いているひとに影響を与える、と云うのはもちろんあると思います。ただ、ヘヴィメタル好きの農園主の手になる作物がおいしくない、と云う話には断じてならないはずだ、などと主張してみます。
by pooh (2008-01-24 07:50)
> TAKESANさん
正確でわかりやすい著述もさることながら、オチまで準備する周到さが手練れですよね。
せっかくだからURLを貼っておきましょうかね。
http://junjikido.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_7617.html
by pooh (2008-01-24 07:54)
城戸先生は知り合いじゃないですが、会ったことがあるし、この先会う機会もありそうなので、今度会ったら伝えてみようかと思います。
by newKamer (2008-01-24 10:10)
> newKamerさん
あぁ、そう云う際に話題として出していただければ。
by pooh (2008-01-24 23:39)
>トラックバックを切っていらっしゃるのが残念です。こんなことを云っている奴がいる、と云うのを直接届ける方法がない。
届けるだけならば、メールでもええのではないですやろか?
by ゆんゆん探偵 (2008-01-28 01:27)
> ゆんゆん探偵さん
いらっしゃいませ。
おっしゃるとおりです。じゃあなぜそうしないか、と云う理由もあるんですが、ちょっとここではそれを述べることを控えさせていただきます。すみません。
by pooh (2008-01-28 07:49)
ベネッセには、私からも抗議を送っておきました(一応、私にも送る資格はあると思ったので)
定型文の返信ではなく、指摘を受け止め考えて書かれたと思われる返信が返って来ました。指摘のメールでちらっと触れただけだったのですが、城戸教授にもお詫びの連絡をすることにしたらしいです(ここら辺はちょっとやりすぎというか、お詫びするなら購読者全員に対してではないか?とも思いますが)。
今後の紙面づくりに対する心構えにも触れられていて、真摯な態度だと思いました。本当に変わるのかは、今後を見ないとわかりませんが、大変印象の良い返信でした。
ご報告まで。
by newKamer (2008-01-31 16:08)
> newKamerさん
素晴らしいです。
城戸さんはどう反応されるでしょうね。
by pooh (2008-01-31 21:39)