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It's a small world (「ゆらぎの森のシエラ」菅 浩江) [ひと/本]

結構前に本が好き!にていただいていて、読了していたのだけれど、さてどう書こうか少し迷っていた小説。

ゆらぎの森のシエラ

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書評/SF&ファンタジー

この著者の小説を読むのは、ひょっとするとこれが初めてかもしれない。なぜか名前は昔から知っているけれど。

マキャフリィを引き合いに出すのが適当かどうかは分からないけれど、女性作家は「小さな世界」を書くのがうまいひとが多い、と思う。小さいなりにも統制が取れていて、矛盾が少なくて、例えば何かそこに謎があったとしてもその謎のフォーカスは割合強く絞られている、と云うような。で、こう云うのはファンタジーに向いている。ファンタジーは作者がその世界すべてをつくらなければならないから。

いやもちろん、ファンタジーの世界観に綻びがあってはいけない、と云うことはない。おおらかにほころんだ世界観を持つ悠揚迫らぬファンタジーも幾つもある。でも、本来のベクトルは「架空の原則に準拠した、統一された世界観」に向かう。

実際のところ、そちら方面へ向かう指向性を除けば、この小説はまさにSFなんだと思う。

ただ、著者の初長編だけあって、どうしても粗さがある。なんと云うか、ひどく高純度の原石があまり注意深く磨かれないままどっさりとちりばめられている感じ。ひとつひとつの要素はとても美しいので、結果的にその磨かれなさ加減は物量も併せてとてもゴージャスにも見えるのだけれど、それはそれですれた読者の感想であって、このとっつきの悪さはなんだか損だ。

だから逆に、この小説はむしろ悪ずれしているくらいのSF読みに向いているのかも知れない。気を引かれる要素はどっさりあるから。それがあまりにも原型のまま放り出されていることに耐えられる読者なら、是非。


タグ:書評
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