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あのころの未来 (「CGMマーケティング」伊地知晋一) [ひと/本]

ライブドアの「本が好き」プロジェクトを知って、参加願いを出したら受理された。ありがたや。
で、最初に献本をお願いして届いたのがこの本。何と云うか商売がらみですが。
CGMマーケティング 消費者集合体を味方にする技術

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livedoor BOOKS
書評/IT・Web

なんと云うか新しい知見が欲しかったというより、全体を概観する包括的な見取り図が欲しかったというのが献本を申し込んだ理由。で、その目的は充分に果たすことができた。その意味で、なんとなく「Web2.0」と云うのを言葉だけでご存知で、実際のところどのようなものなのか(と云うか、どのような意味で使われている言葉なのか)理解したい方にはとてもいい本だと思う。
それは多分、著者が現場にいて(そうして現場の状況を、なんと云うか「浴びて」)、そのなかでそこからのビジネスを発想すると云うことをしてきた当のご本人だから。

この本は「Web0.0」への言及で始まり、「Web0.0」への言及で結ばれる。「Web0.0」とは、その昔(ぼくについては12年ほど前)に初めてインターネットに触れたときに感じた可能性だ。
そうして、いろんな派生的な問題を生じさせながら、インターネットはそのときに感じたとおりの方向に向けて進化してきた。
これは、凄いことだ。

幾つもの夢想が、いま現実のものとしてぼくたちの前にある。そうしてぼくたちはそこに触れて、それを使うことができる。参加するのも簡単になった。つながりあいは個人対個人の2次元的なものではなくて、集合知と云う3次元的な展開を可能にするところまで来た。それはもう、ビジネスとしても現実にあるものとなった(いまどきネットを虚業と口にして恥じないのは、実際にはネットを使っていない人間かOhMyNews関係者くらいだろう)。

そして、それはこれからどこに向かっていくのか。
−−そのことは、「外にいる人間」として理解しようとしてもおそらくけして理解できない。
ぼくについて云うと、コンピュータにちゃんと触れたのとインターネットに触れたのがほぼ同時で、つまるところどちらについてもまっさらな初心者だった。でも、そのそもそもの最初から、周囲のグルたちには「利用者ではなく、参加者としての振る舞いをすること」を要求されてきた。だから、そもそものはじめからそう云う視点でインターネットと接してくることができたのだと思う。

多分、この本で書かれている「CGMマーケティングで企業が成功する秘訣」も、おそらくはそう云うことだ。
いち参加者として振舞うこと。誠実であること。与えることを当然とし、感謝を持って受け取ること。自分のモニタの向こうにいる人間たちを自分と同質のプレイヤーとして認め、敬意を持って接すること。
インターネットユーザとしてはもともと当然のように求められてきたことだ。

結局のところ、キーワードは多分「貢献」だ。
企業はいちネットワーカーとして情報提供をする。優れた自社製品についての情報を提供することは、他のネットワーカーにとって有益なことだ。驕らず、媚びず、堂々と「情報を提供することによる貢献」を行う。
SEO対策を行うのも、自社商品に対する評価材料としてユーザの声を集めて提供するのも、貢献だ。そこを踏み外してコントロールしようとすることが失敗につながる。

もちろん、ビジネスとして考えた場合にこれだけでは足りないのは当然のこと。
でも、失敗の原因はだいたいこの原則をきっちりと踏まえていないことにあるのではないか。
この点について、著者は実例を踏まえながらきっちりと書いている。ぼくとしては「なんとなく理解しているつもりでも言語化できていない部分」について読めたのがありがたかった。

逆に「いかにしてマネタイズしていくか」の部分については、これも実例は挙がっているものの少し物足りない。とは云えこれは当然のことで、それこそがビジネスを構築するコアのアイディアに当たる部分なので各自が考えなければいけないのは当たり前。考えるための材料はいくつもちりばめてある(現時点ではまだぼくは活用できていないけれど)。

基礎として包括的な知識が得たければ、この本は非常にいい、と思った。献本いただいてよかった。


タグ:書評 ネット
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コメント 2

柘植

こんにちは、poohさん。

間違った自負かも知れないけど、ネットで利益は生まないけど一つの流れを生み出す(そう大きくは無いけどね)のに一部貢献したという自負は持っている訳です。ご存じの「悪徳商法レス屋」の世界ですね。最初に、悪マニの開設者と悪マニとは別な掲示板で「情報を流通させる事で何ができるかやってみたい」という部分で共鳴して、それでいて、私のやったことは、彼が考えていた事とは少しズレていたのだけど構わず私のやり方を押し通しているうちに、なんとなく「成り行き」で流れができてきた。

彼は彼で「場所を増やす」事を考え続け、私は私で「その場所で書き込む人」を増やすことを考え続けた訳です。私は場所から場所へ飛び回りながら書き続け、彼は彼で場所のリンクを増やしてきた訳ですね。

>結局のところ、キーワードは多分「貢献」だ。

そのとおりだと思います。
by 柘植 (2007-03-06 08:54) 

pooh

> 柘植さん

ぼくはその頃、別の名前の柘植さんから随分と示唆をいただきました。
柘植さんの発言から勇気をもらったひとは(多分beyond氏を含め)随分いたのではないかと思います。「インターネット上の対話で思考を深める」と云うことが初めてスタイルを獲得した時代に(そう云えばあの頃は2ちゃんねるでさえ随分とまだ若かったっけ)果たしてくれた役割は大きかったと思いますよ。
by pooh (2007-03-06 22:18) 

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