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科学の手順 [世間]

ひょんなところで、ひょんなものがつながった。TBS「人間!これでいいのだ」での論文曲解。この「ハイパーソニック・エフェクト」についての論文を発表している大橋力氏は、芸能山城組の山城祥二氏と同一人物だ。このブログで紹介しているJVCのガムラン録音の大半を担当されている。

ガムランは可聴閾を超える高周波音をたくさん含んでいる。この高周波音が脳にいい影響を及ぼす、と云うのが基本的な主張のはず。でも、CDは20kHzまでしか入らないので、録音ではその効果は得られない、と云うことをライナーノートでよく悔しがっておられる。

で、この「ハイパーソニック・エフェクト」が本当にあるのか、と云うことについてぼくがどう思うかと云うと、分からないとしか云いようがない。関心もそんなにない。そう云う実利性と云うか現世利益を求めてガムランを愛好している訳ではないし、ともかく(大橋氏ご本人がおっしゃるように)CD録音を中心に聴いているのでは効果は望めないのだ。生でフルセットのガムランに近いものを聴いたのはバトゥブランで観たバロンダンスの伴奏だけだけれど、そもそもバロンって曲そのものはそれほど面白いと思えないのであんまり集中していなかったし、そんなに興味もなかった(でもダンスそのものは面白かった。って云うかバロン可愛いよバロン)。

ただ、大橋氏は自分の録音するガムランのCDのライナーなんかでも、ハイパーソニック・エフェクトについて(もちろん結構触れてはいるけれど)そのご利益を強調することはそれほどない。むしろハイカットされたCDなどで聴くことによる悪影響も想定しているようだ。研究の内容の当否はともかくとして(とは云えちゃんとアメリカのJournal of Neurophysiologyに論文が掲載されているのだが)、ちゃんと科学の手順は踏んでいるわけで。なんと云うか安易に解釈されるとトンデモ扱いされがちな研究だ、と云う認識がある分、今回については当事者たちによる反発が大きかったのではなかろうか、などと思った。


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きくち

そうなんだよね。千葉工大時代の研究なのかな。
大橋さんは、もう千葉工大じゃないよね。
by きくち (2007-02-09 00:52) 

pooh

> まこっちゃん

あ、そっか。千葉工大で大橋さんがやっていた研究を、大橋さんが去ったいまでもひきついで誰かがやってる、って話なのか。

大橋さんの場合ハイパーソニック・エフェクトとバリ音楽の音楽としての価値とをちゃんと分別してるように見えるんですよね。考えてみると山城組の得意技であるケチャには(青銅楽器じゃなくて人の声だから)ハイパーソニック・エフェクトは期待できないだろうし(別の意味で強烈なトランス効果は見込めるけど、それは別の原理)。
by pooh (2007-02-09 08:00) 

きくち

論文には大橋さんが名を連ねているし、関わってるわけですが、「週刊新潮」の取材に誰が答えたのか、興味があります。大橋さん自身なら、名前を出すと思うんだよ 
 
ケチャはハイパーソニックよりもリズムだからね
by きくち (2007-02-09 10:53) 

pooh

ってえかケチャは「口ガムラン」なんで、リズム的骨格は基本的に同じ。旋律パートとリズムパートがいたりするし。
ただ、オランダ人のシュピースがショー用に再構築するまではサンヒャンって云う宗教儀式だったんだよね。もともと集合トランス発動に使われてた音楽技法なんで、そういう性能は高いはず。

って云うかガムラン楽器は倍音たっぷりでもともと音程的にはゆるい(その上わざわざずらしてあったりする)ので、重点はたぶんそこにはないんだよね。楽団ごと(セットごと)に全部チューニング違うし。だから、ケチャみたいに旋律の要素が薄い(ないわけではない)スタイルでも、本質は損なわれないんだな、多分。
by pooh (2007-02-09 12:23) 

No.4560

こちらでははじめましてです。最近よく見にきてます。

この番組、偶然見てたんですけど、最初にハイパーソニック云々の説明をしていた際、ハイパーソニックを出しているものの一例として「スウェーデン語(もしくはスウェーデン人の発音の一部だったかも)」が紹介されていて(他の言語では出ないとも言っていたと思う)、それを見た瞬間個人的にトンデモ認定したんですね、ハイパーソニック・エフェクト全てを。

で、ハイパーソニック自体はどうやらまともっぽい話らしいと、昨日kikulogを読んで知ったんで(汗)、ちょっと検索したんですけど、ハイパーソニックとスウェーデン語の関係を示す資料が見つからないんです。(英語は苦手なんで、不完全な検索しかできませんでしたが。)

だから、まずスウェーデン語に関しては嘘なんだろうなぁ、という認識で(事実ならトリビアに投稿します)、それが捏造かと言われれば、番組の流れ的に、わざわざこんな瑣末な捏造をする必要性を感じなかったので、これもないな、と。

もし、スウェーデン語云々の話がどこかの怪しげな科学者の説で、それを番組が信じちゃって使ったのだとしたら、捏造ではないですけど、ハイパーソニックを真面目に研究する人にとっては不愉快極まりないだろうなぁ、と思いました。

初カキコが長文で申し訳ないんですが、僕が書きたかったこととしては、
・スウェーデン語云々の話はまともなのかどうかを(僕が)気になっている。
・poohさんの最後の段落と同意見。
です。あ、二行で終わった。


ちなみにガムランは聴いたことがないです。ごめんなさい。(音楽に関しては、マスコミのコントロール通りに聴いちゃってるタイプです。)
by No.4560 (2007-02-10 03:48) 

pooh

> No.4560さん

いらっしゃいませ。

ハイパーソニック・エフェクトについては実在するのかどうかわからないんですけど、少なくとも大橋力さんや千葉工大の方々は実在の可能性を信じて研究している訳で、でその研究手法そのものにはトンデモな要素は特にない、ってところだと思うんですよ。人間の声も含まれる周波数成分がすべて可聴域内でもないでしょうから、子音の構成とかで特定の言語が(比較的)ハイパーソニックを含んでいる可能性は絶対にあり得ない、と云うことでもないかと。ただし、ポジティブにしろネガティブにしろ人間の脳機能に大きな影響を与えるほどのものが特定の言語にあるか、と云うとなさそうですけどね(スウェーデン人は常時脳内血流がだばだば流れっぱなし、ってこともないでしょうし)。

大橋さんご本人にトンデモな空気を纏っているような部分がまるきりないか、と云うとそういうこともないかもしれない、とも思います(持って回った云い方でごめんなさい)。でも、トンデモな発想から生じていても、ちゃんと手順を踏めばそれは科学の俎上に乗る訳なんですよ。だからこのコメント欄の上の方でも、きくちさんは簡単に退けたりはしていないわけですね。

ガムランは個人的趣味なんで。このブログに上がる文章でも、自分でもガムランについての文章が一番面白いと思ってたりするんですが、当然の如くアクセスは稼げないf(^^;。
by pooh (2007-02-10 04:54) 

pooh

> No.4560さん

あ、もしガムランに興味をお持ちでしたら、最初はこの辺りをお奨めしましょう(ほとんどどさくさ)。
http://blog.so-net.ne.jp/schutsengel/2006-10-17
安いし、入手しやすいし、とっつきやすいし、聴きやすい。大橋さんの録音ではないのでハイパーソニック・エフェクトはあまり期待できないですけど。
by pooh (2007-02-10 06:23) 

No.4560

スウェーデン語云々に関しては、Tv_Catch_Upさん↓によると、
http://www.syuger.info/article/32762602.html

正確には「スウェーデン語のSの発音」との紹介だったようで、ハイパーソニックを出すこと自体は、poohさんの書いておられるようにありえそうですね。(少なくとも定義がある程度はきちんとしてることが分かったので。僕の勘違いが原因ですが、スウェーデン語なら何でも…っていうのはさすがに変だと思っていましたし。)

聞くだけで頭が良くなるというのは論外として、(Sの発音による)ハイパーソニックが脳機能に与える影響はあったとしても、おそらくそれほどのものではない、というのも同意見です。

「スウェーデン語」というのならネタとしても面白そうだったので、ソースを調べてみようかと思っていましたが、「スウェーデン語のSの発音」はあんまり面白くなさそうなので、調べるのは止めにします。僕の勘違いからお騒がせしてしまい、すみません。


ガムランに関しては、思いのほか安かったので上戸彩と手嶌葵の誘惑に負けなければ、次買って聴いてみます。密かにかなり厳しい条件かも(^^;

その上でちょっと今思いついた脱線を…書いてたんですが(水伝関係)、長くなりそうなので、完成すれば後でトラバを送ります。こういうときにトラバは便利ですね。
by No.4560 (2007-02-10 15:25) 

pooh

> No.4560さん

ヨーロッパの北の方の言葉は、なんか「こする音」は多そうですよね。それは確かに高周波音だったりするかも。とは云え所詮子音だから、なんというか、そんなに聴こえなさそう。

トラックバックお待ちしています。
by pooh (2007-02-10 22:38) 

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