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表現の可能性(1) [ガムラン]

さて、このアルバムを扱うことにした。正直、何がどれだけ伝えられるのか自分でも危ういけれど。

衝撃と絢爛のスーパーガムラン

衝撃と絢爛のスーパーガムラン

  • アーティスト: ヤマサリ
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2000/08/02
  • メディア: CD


バリ芸能はもともと共同体のなかで儀式として発達したものが源流だ。もちろん度合いの違いこそあれ当初から娯楽の要素もあっただろうけれど、そう云う意味では「神楽」だ。だから、ガムランの楽団も地縁をベースにしているのが本来の姿、のはずだ。これこれの村にあるゴン(ガムラン)、と云う捉え方がもともとの姿で、例えばこのブログで書いてきた中でもグラダグのゴンとかテジャクラ村のゴンと云うのがそのパターン(ちなみに、ゴン、と云うのはガムランの最低音を担うゴングを意味すると同時に、ガムランの楽器セットそのものも意味するようだ。どこそこのゴン、と云うときに、それはその地域で伝わり、使われている楽器セットを意味し、ひいては楽団を意味する。楽団員は世代交代しても、ゴンは同じものが使われ続ける訳だ)。

それに対して、グンカことマンダラ翁が創設したグヌン・サリをはじめとするプリアタン周辺の楽団は、血縁をベースにした、あるいはもう地縁も血縁も無視してともかく「演奏の上手い奴」を集めて結成した、と云うニュアンスのもののようだ。同じマンダラ翁の創設になるスマル・プグリンガンの楽団であるティルタ・サリとか、このヤマ・サリなんかも同様の成り立ちで、要するに何と云うか、「神楽」ではなく「芸術」のための楽団、といった感じか(ちなみに同じプリアタン周辺でもグヌン・ジャティはタガスの地縁をベースに構成されてるっぽい。この楽団はそもそもプリアタン王家に伝わった希代の銘器の払い下げを受けて結成されたのが始まりのようで、ティルタ・サリの楽器セットのコピー元がこの楽団のセット、と云うことらしい)。
そう云う訳でグヌン・サリやティルタ・サリ、ヤマ・サリのメンバーは、地元に戻れば自分の地域の楽団のメンバーだったりもするようだ。「神楽」をすべきときには、そちらを優先して定期公演をキャンセルしたりするらしい。

なんだか長々と関係なさそうな話をしているが、つまりヤマ・サリはマンダラ翁方式でプリアタンで作られた最新の楽団だ、ということだ(いや、プリアタンには女性だけの楽団とか子供だけの楽団もあるようなんだけど、録音が手に入らない)。リーダーのヘンドラワン氏は名前からしてプリ・アグン王家のひとで、プリ・カレラン王家のマンダラ翁より格上のはずなんだけど、とりあえず王家の人間が声がけして結成された楽団としては似た成り立ちを持っていると云ってもいいんだろう。

で、このアルバムだが。

最初にヤマ・サリの嫌いなところを書いておこう。まず、よくも悪くもゴン・クビャールなので、基本的に音色に艶が少ない。特にこの楽団の楽器は結成とともに新造されただけあって若く、丸みの少ないエッジの立った音がする。ここが最近のぼくの耳には少し合わない。
ただ、これは好みの問題だ。実際のところ、このグループの恐ろしく骨格のがっしりした音楽には、この音質は効果的だったりする。

JVCにおける最初の録音でも、その演奏のコントロール力は際立っていた。でも、この録音ではひとまわりスケールが拡大している。なんと云うか、伝統音楽とか民族音楽とか云うカテゴリで語るのが少し難しいくらいに。

と云う訳で。長くなったので、なんとアルバムレビューの前後編構成をとらせて頂く。続きはまた。ちなみにAmazonでは07年1月29日現在在庫がないらしく中古が法外な価格で出品されているけれど、セブンアンドワイでは新品が正価で買えます(ぼくにアフィリエイトフィーは入らないけど)。念のため。

1/31追記:
そう云う訳で続き書きました


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